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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十一章 ウィンターロック城
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5 魔水晶とアラベス

「トランスポート!」

 僕とアラベスとマイヤーと、ユーニスとマーガレットとメイドさんが二人。

 大人が七人に木箱を四つも乗せると魔方陣が少し狭くなったけど、転送は問題なく成功した。

 ……アラベスはずっと魔方陣に乗ってただけで、何もしてない?

 マイヤーと二人で行くのが正解だったか。


「おかえりなさいませ、ソウタ様」

「ただいま〜。ユーニスとマーガレットはこの前も来たから、エミリーさんは知ってるよね? 後ろの二人はマーガレットの世話をするために、ここで働くことになったから……。あとは任せても良いかな?」

「全てお任せください」

 魔方陣から降りて、出迎えてくれたエミリーさんに連れてきた人を紹介する。

 ユーニスとマーガレットの部屋は用意してあると思うけど、いきなり増えた二人のメイドさんの部屋とか使用人同士の関係とか、面倒な話がいろいろありそうだけど……。エミリーさんなら丸投げしても大丈夫だろう。


「マイヤーはユーニス様とマーガレット様をお部屋に案内して。そちらの二人には作業の進め方を説明しますので、私と一緒に来て下さい」

 エミリーさんがてきぱきと指示を出し、何も言われなくても下働きの男性が木箱を持って後に続く。

 ……マイヤーが妹属性で、新しく来たメイドさん二人が姉属性なら、エミリーさんは大家族のお母さん属性かな?

 そんな属性があるのかは謎だけど。


         ☆


 新しく来た二人のメイドとエミリーさんが最後に部屋を出て、工作室に残ったのは僕とアラベスだけになった。

 ユーニスとマーガレットの引っ越しが思ったより早く終わって、昼ご飯にはまだ早い時間。

 仕方がないのでいつものように、粘土で遊ぶことに……。

 さっき思いついた、ルビィのおもちゃでも作ろうかな?


「アラベスは見てるだけで良いの?」

「はい。作業を見せていただけるだけで十分です」

 窓際に置かれた大きな木のテーブル。

 テーブルの隅で日なたぼっこしているルビィ。

 粘土をいじっている僕を、テーブルの横から覗き込むアラベス。

 アラベスとマイヤーには女神の土について説明してあるし、粘土を触っているところを見られても問題無いんだけど……。じっくり見られると、微妙に恥ずかしくてやりにくい。


 白い粘土の塊から、耳たぶぐらいの量をちぎり取る。

 サイズを大きくして手の平で丸めて、野球のボールぐらいの球を作る。

 丸くする作業は小さい頃に作った泥団子と同じだ。簡単簡単。

 あとはパーカーさんからもらった水晶玉をイメージして——

「お師匠様は自分の手で、魔水晶を作れるのですね」

「……おししょうさま?」

「一番弟子として、ソウタ殿をどう呼ぶべきかずっと悩んでいたのです。いろいろ考えた結果、最上級の敬意を込めて“お師匠様”と呼ぶのが正しいのではないかという結論に至ったのですが……。駄目でしょうか?」

「えー……」

 真剣な表情で語っているアラベスが、ちょっと怖い。

 どう見ても僕の方が年下だし、お師匠様なんて呼ばれるのはおかしいと思うんだけど……。この世界では見た目を気にしないのが普通なんだろうか?

 魔族やエルフは人間より寿命が長いそうだし、その辺の感覚も違うのかな。


「それじゃあ、僕が何か教える時はお師匠様って呼んでも良いけど、それ以外の時は今まで通り、名前で呼んでもらえるかな? その……お師匠様なんて呼ばれるのには慣れてないから」

「お師匠様の一挙手一投足から、常に学ばせていただいてますから。ここはお師匠様に、呼び方に慣れていただく方が良いのでは?」

「全面的に禁止します」

「ああっ! すみません。ごめんなさい。謝りますから、何か教えてもらっている時だけでも、お師匠様と呼ぶのを許して下さい!」

 頭を下げて謝っていても、アラベスの口ぶりが微妙に大げさというか、芝居がかっているように感じられるのが気になる。

 そういう人が周りに大勢居る環境で育ったのかな?

 最初に会った時、魔族とエルフのミックスだって自己紹介で言ってたし、ディブロンク伯爵の城で紹介されたお父さんは、魔族の国の先代魔王だった。

 つまり、アラベスのお母さんがエルフで……。僕が聞いてないだけで、何か複雑な理由があるのかも。

 詳しく聞いてみたいような、聞くのが怖いような……。って、この話はまた今度で良いか。


「では、しばらくは様子見で、その呼び方を許可します。その代わり、おかしなタイミングでお師匠様って呼ばれた時は、完全に禁止すると言うことで」

「ありがとうございます。今後、状況に応じて呼び方をきちんと使い分けるように気を付けます。お師匠様!」

 この呼び方をアラベスは、かなり気に入っているようだ。

 そのうち、なし崩しに押し切られそうな予感……。

 諦めて最初から受け入れる方が楽だったか?



「……話は変わるけど、アラベスは魔水晶を知ってるの?」

「お師匠様が作った物ほど大きくありませんが、いざという時のために私も持っています。……これですね」

 アラベスが腰のポーチから、オレンジ色の水晶玉を取り出した。

 綺麗に磨かれているのは同じだけど、こっちはウズラの卵ほどの大きさで中の模様もないようだ。

「ほんとだ……。それほど珍しい物じゃないんだね」

「魔水晶は冒険者なら誰でも知っているような物ですが、お師匠様が作ったのはサイズも大きいですし水色の模様付きですから、滅多に出回らないような逸品ですよ。溜められる魔力もすごいことになってるのでは?」

「試しに、使ってみてもらえる?」

「わかりました。やってみます」

 アラベスが持っていたオレンジ色の水晶玉を受け取り、代わりに、僕が作った水色の水晶玉を手渡す。

 やりとりしている水晶玉が目に入ったのかな?

 すっと起き上がったルビィがアラベスの手に飛びつこうとしたけど、優しく抱きかかえて止めておいた。


「……あれっ? この魔水晶、もう限界まで魔力が溜まってますよ。これ以上は入りません」

「あー……。やっぱりそうなんだ。ゴーレムだけじゃなくて魔術具でも、同じ現象が起きるんだな……」

「でも、この魔水晶に溜まってる魔力は、お師匠様が使える魔力より多い気がするのですが……」

「そうでしょ? おかしいよねぇ……。どこから魔力が出てきたのか、僕にもわからないんだよ」

「良ければ、詳しく説明してもらえませんか?」


 一定の時間だけ動くゴーレムでいろいろ実験して、造ったばかりのゴーレムにも魔力があり、魔法を使えることに気が付いた。

 魔力が減った状態で時間が尽きて動かなくなったゴーレムでも、再び動かした時には魔力が満タンになっている。

 僕が造ったゴーレム同士なら、魔力を自由にやりとりできる。


「それは、つまり……。ゴーレムを次々と造って魔力を融通すれば、無限に魔力を使えるのでは?」

「そう思ったんだけどね。ゴーレムを造る時に使う魔力は僕が出さないと駄目だから、無限ってことにはならないみたい」

「……先ほど魔水晶を作った時は手で撫でただけに見えましたが、魔力を使われたのですか?」

「あれっ? そう言われてみると……。ちょっと貸して」

 オレンジ色の魔水晶をアラベスに戻し、水色の魔水晶を受け取って、右手で優しく撫でて粘土に戻す。

 もう一度撫でると、粘土が再び魔水晶になった。


 ……どうかな? リンドウ。

『粘土に戻す際も魔水晶を作る際も、マスターの魔力は消費されていません』

「魔水晶を作るだけなら、魔力は要らないみたいだね」

「だとしたら……。魔水晶をいくつも作ることで、無限に魔力を使えるのではないでしょうか? さすが、お師匠様ですね……」

 リンドウが居るから魔力には困ってないけど、この魔力がどこから出てくるのかは調べてみたい。

 増やす手順を工夫すれば、新しい使い道が見つかるかもしれないし。

 ……そもそも魔力って、理由もなしに発生する物なんだろうか?


「ん〜……。もうちょっと実験してみたいから、付き合ってもらえる?」

「もちろんです! 私は、お師匠様の一番弟子ですから!」

「にゃああぁぁ〜」

 水晶玉に向けて手を伸ばしたルビィが、可愛い声で鳴いた。


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