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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十一章 ウィンターロック城
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4 マーガレットの引っ越し

 トパーズと一緒に海上散歩を楽しんだ日の夕方。

 引っ越しの準備が整ったので迎えに来て欲しいと、アラベス経由でユーニスから連絡が入った。

 特に用事も無いし、翌日の午前中に迎えに行くことにした。

 アラベスに返事を送ってもらったけど……。毎回、アラベスを経由するのは時間の無駄かな? 僕も通信水晶を持ってた方が良い?

 その前に、左手に填めてる女神の指輪で、普通の通信水晶とやりとりできないか実験するべきか。グリゴリエルさんは通信水晶を使ってたし、たぶん、やればできると思うんだよね。

 ん〜……。でも、自分でやりとりしてると大事な用事を忘れそうだし、アラベスは僕の弟子だし、しばらくはこのままで良いかな。


         ☆


 翌日。いつものように朝ご飯を食べて、ルビィを抱っこして工作室へ。

 転送魔法で移動する前にエミリーさんと下働きの人を部屋に呼んで、そのまま待機しててもらう。

 引っ越しの荷物がどれぐらいあるかわからないので、もし荷物だけ先に送られてきたら、魔方陣から降ろすようにお願いしておいた。

 アラベスとマイヤーに聞いたんだけど、マーガレットはどれだけ荷物が多くても不思議では無いそうだ。

 部屋に入りきらないぐらいの荷物だったらどうしよう……?

 今からちょっと怖い。


「それじゃあ、転送するよ……。トランスポート!」

 僕とアラベスとマイヤーの三人が魔方陣に乗って、冬の城へと移動。

 いつものように視界が白く染まり、すーっと光が消えていく。

「おはよう、ソウタ君」

「ソウタ君、お久しぶり〜! わざわざ迎えに来てもらって、悪いわね」

「おはようございます。お久しぶりです。……お久しぶり?」

 魔方陣の前で、ユーニスとマーガレットが小さく手を振っていた。

 後ろには執事服姿のパーカーさんと、メイド服姿の女性が二人並んでいる。


「細かいことは気にしないで。それでね、私の世話をするのにこの娘たちを連れていきたいんだけど問題ないかしら?」

「ジェーンと申します」

「メアリーと申します」

 マーガレットの言葉にあわせて二人のメイドが僕の前に来て、優雅にお辞儀してくれた。

 名前を聞くのは初めてだけど、二人とも冬の城に泊まっていた時に何度かお世話になった記憶がある。

 ピンクの髪に眼鏡をかけているのがジェーンさんで、長い紫の髪を首の後ろで結わえているのがメアリーさんか。

 あくまでも個人的な印象だけど……二人とも姉属性、かな?

 マイヤーが妹っぽい雰囲気なのとは対照的だ。

 客観的に見ると僕が一番年下で、妹っぽいとか無いんだろうけど。


「……大丈夫かな? マイヤー」

「問題ありません。こうなるだろうと予想して、エミリーにも部屋を用意しておくように言ってあります」

 あとで聞こうと思って忘れてたけど、伝説の英雄が住むともなれば、お付きの人が付いてくるのは当たり前か。

 屋敷で働いてる人たちとうまくいくのか心配だけど……。英雄の城で働くようなメイドさんなら大丈夫だろう。たぶん。

「それじゃあ、ジェーンさんとメアリーさんも一緒に来るってことで。……荷物はどこですか? 四人分になるんですよね?」

「こちらです」

 パーカーさんがすっと手を挙げると、木箱を抱えた下働きの男性が二人、城壁の門から広場へと出てきた。

 普通に歩いてるように見えるのに、あっという間に到着して……。そういう歩き方を訓練してるんだろうか?


「あれっ? 荷物はこれだけですか?」

 魔方陣に乗せられたのは、僕でも持てそうなサイズの木箱が四つだけだ。

「普通の木箱にしか見えないかもしれないけど、これは、荷物を圧縮して運びやすくする魔術具だから。見た目よりずっと多い荷物が入ってるのよ」

「引っ越しの時、私も同じような魔術具をお借りしました」

 ユーニスとマイヤーが謎を解いてくれた。

 ……魔術具も便利だなぁ。

 何台もの馬車で運ぶような荷物を予想してたけど、心配しすぎだったか。


「これなら、一回の転送で終わりそうですね。それじゃあ、ユーニスとマーガレットも魔方陣に乗って——」

「ソウタ様! ソウタ様にお願いしたいことがあるのですが、少しお時間を頂いても宜しいでしょうか」

 急に声をかけてきたのはパーカーさんだった。

「えっ? えーっと……。良いんでしょうか?」

「どうぞ。私たちはここで待ってるから、二人で話してきて」

 マーガレットがさっと手を振って、場所を変えるようにうながす。

 なんだか楽しそう? 怒ってる感じはしないかな。

 僕は素直に魔方陣を降りて、パーカーさんと一緒に広場の端へと移動した。



「ソウタ様にお願いしたいのですが、一ヶ月に一度……。いえ、二ヶ月に一度ぐらいのペースで良いので、冬の城を訪れていただけないでしょうか?」

「それって……。僕が? 何か理由があるんですか?」

「本来ならお嬢様に、定期的に城の様子を見に帰るようお願いするところなのですが、忘れられてしまう可能性が高いので……。その点、ソウタ様が城に来られるのであれば、お嬢様も一緒に戻ってくると思うのです」

「あー……。そういうことですか……」

 すごく深刻な話かと思ってたら、そうでもなかった。

 でも、主が出て行ったら城で働いている人も不安になるだろうし、パーカーさんの気持ちもわかるかな。

 転送魔法を使えばここまで来るのは簡単だし、トパーズに乗せてもらって来てもいいし、前に泊まった時みたいにマイヤーを連れてくれば、マイヤーにお休みをあげることもできるだろうし……。悪い話じゃ無いかな。


「謝礼という訳ではないのですが、宜しければこちらをお納めください」

 そう言ってパーカーさんが胸元から取り出したのは、野球のボールぐらいの大きさの水晶玉だった。

 淡い水色の水晶玉の奥で、炎のような模様がゆらゆら揺らめいている。

 ……執事服のどこにこんな物が入ってたんだろう?

 マイヤーのバッグみたいに、見た目より大きな物が入るポケットが服に付いてるのかな?


「これは……。これは何ですか?」

「魔水晶と呼ばれる魔術具です。いざという時のために、魔力を溜めておく道具だと思ってもらえればわかりやすいでしょうか」

「そんな魔術具があるんですね……」

 見た目は綺麗だし魔力を溜めておけるのは便利そうだけど、今のところ魔力には困ってないからなぁ……。

「古の石像使い(ゴーレムマスター)がゴーレムを造る際に、素材として魔水晶を使ったという話を資料で読んだことがあります。ソウタ様であれば、これをゴーレム作りに使えるのではないでしょうか?」

「そうなんですか⁉ それは試してみたいかも……。でも、本当にもらっても良いんですか?」

 ゴーレムに使える素材と聞いて、急に興味が湧いてきた。

 今は使い方がわからないけど、前に廃鉱山で会った石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんに聞けばなんとかなるのでは?


「どうぞ、お役立てください」

 手渡された水晶玉は、見た目よりずっと重かった。

 炎のような模様が見えるけど、熱を帯びてる訳じゃないんだな。

「ありがとうございます。……毎月一回は、マーガレットさんと一緒に城に行くようにしますね」

「お願いします」

 にっこり微笑んでいるパーカーさんと視線が合う。

 眼鏡の奥の瞳がキラリと光った。

「にゃああぁぁ〜」

「ああ〜まってまって。これは、ルビィのおもちゃじゃないよ」

 左腕で胸元に抱えているルビィが、右手に持っている水晶玉に触ろうと手を伸ばしてくる。

 こういうおもちゃが好きなのかな?

 暇な時にでも作ってみるか。


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