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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十一章 ウィンターロック城
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3 竜の翼

 リンドウと一緒に腕を増やす魔法を実験。

 出す場所を工夫したり腕を六本にしてみたりして最終的に、本物の腕の上に魔法の腕を一組増やす形で落ち着いた。

 ずっと増やしたままだと邪魔そうだけど、細かい作業をする時は便利だな。


 調子に乗って城の模型を作り込んでいたら、いつの間にか、夕飯の時間を過ぎていたようだ。

 再びマイヤーが呼びに来て、この日の作業は終了。

 てっきり怒られるかと思ったら……。腕が増えた姿を見てびっくりして、それどころじゃなかったようだ。助かった。


 次の日も、朝から工作室にこもって作業の続き。

 昼食の時間までに、無事、城の模型が完成した。

 アラベスとマイヤーに見てもらったけど、びっくりするぐらい良くできているそうだ。

 とりあえず、工作室の棚に飾っておいて、ユーニスやマーガレットが来たら自慢しよう。


         ☆


 昨日は一度も屋敷から出なかったし、今日は午後から散歩に行こうと思ってたんだけど……。リュックを取りに工作室に戻ったところで、ふと気が付いた。

「リンドウ。いまさらだけど……翼を出す魔法って、本当は空を飛ぶ時に使う魔法なんだよね?」

『その通りです、マスター』

「つまり、僕でも空が飛べるってこと?」

『はい。その通りです』

 昨日は途中からマイヤーの話になって、そのまま忘れてたけど……。自分の翼で空を飛ぶのって楽しそう。

『昨日は基本となる魔法を試していただきましたが、そこから発展させた魔法も既に用意してあります。マスターさえ宜しければ、こちらもテストしていただきたいのですが……』

 言葉の端々から、わくわくしてる感じが伝わってくる。

 リンドウは新しい魔法を試すのが好きなんだね。

「それじゃあ、散歩のついでに外で実験してみようか」

『ありがとうございます!』



 部屋まで迎えに来てくれたマイヤーと一緒に屋敷を出る。

「散歩の前に試してみたい魔法があるから、ちょっと見ててもらえる?」

「了解しました」

 空を飛ぶのがうまくいかなくても、マイヤーなら助けてくれるだろう。

 抱っこしてたルビィを地面に降ろして、僕は呪文を唱えた。

「今日は発展系で……。ドラゴンウイング!」

「ソウタ様。この魔法は……?」

「この前、冬の城に行った時に魔法がいっぱい載ってる本をもらってね。そのうちの一つをリンドウが使えるようにしてくれたんだよ」

 話をしながら首を回して、背中に生えた翼を確認する。

 コウモリの翼を大きくして、ゴツくした感じ?

 カッコいいのは間違いないけど、僕にはあってないかも……。


「同じ魔法をマーガレット様が使っているのを見たことがあります。離れた場所に急いで行くのに便利だそうですが……」

「確かに、これならかなりのスピードが出そうだね。うわっ、飛んだ!」

「ソウタ様っ‼」

 軽く羽ばたいただけで、五メートルほど舞い上がってしまった。

 どうやら、腕を増やした時とはかなり感覚が違うようだ。

 腕は元々持ってる物だから、使いやすかったのかな?

 この翼は、しっかり慣れないと危ないかも……。


「ご無事ですか? どこか、ぶつけたりした所は……」

 翼を出したマイヤーが、僕を追いかけて飛び上がってくる。

 マイヤーの慌てた表情は新鮮だなぁ。

「大丈夫、ちょっとびっくりしただけだよ。このまま飛ぶ練習をするから、しばらく付き合ってもらえる?」

「了解しました。……ソウタ様には関係ない話かもしれませんが、空を飛んでいる間に魔力が尽きるとそのまま落下してしまいます。魔力の残量に気を付けておいてください」

「ありがとう、気を付けるよ」

『問題ありません。現在の私の魔力であれば、優に一ヶ月は飛び続けることが可能です』

 心の声でリンドウが突っ込みを入れてくる。魔力に関しては、かなり自信があるみたいだ。

 ……魔力がたっぷりあるのはわかったから、リンドウは僕が慣れるまでサポートしてもらえるかな? いきなり変な方向に飛びそうで怖いから。

『お任せください!』


         ☆


 屋敷の建物や森の木にぶつからないように高いところに移動して、翼の扱い方を実験してみる。

 どうやら、自分で翼を動かす必要はなくて、進みたい方向を思い浮かべれば身体が勝手に動いてくれるようだ。

 上昇、下降、前進、後退……。どれも、ゆっくり動く分には問題ないな。


「ピーゥピーゥ!」

「トパーズ、来てくれたんだね。それじゃあ、練習に付き合ってもらえる?」

「ピーゥ‼ ピーゥピーゥ!」

 一人でふわふわ飛んでいたところに、大鷲姿のトパーズが飛んできた。

 僕の周りをぐるりと回った大鷲は、そのまま海の方へと飛んでいく。

 同じように速度を上げて、僕もトパーズの横に並んだ。

 大きく翼を広げ、優雅に空を飛ぶトパーズ。

 カッコいいなぁ……。背中に乗せてもらうのはいつものことだけど、飛んでいるところを横から見ると、印象が変わって面白い。

「ピーゥピーゥ!」

「僕もカッコいいって? いやいや、トパーズには負けるよ」

「ピーゥ……」


 ……何か変なことを言ったかな? 急にトパーズが速度を上げた。

 その気になれば僕の方も、もっとスピードを出せそうだけど……。目を開けたままにするのが苦しい。顔に当たる風が痛くなってきた。

 これぐらい、トパーズは慣れてるのかな?

 猛禽類にはまぶたと別に、目を保護する膜が付いてるんだっけ?

「リンドウ、なんとかならないかな?」

『今、風を弱めるシールドを張ります……。これでどうでしょうか?』

「おお……楽になった……。助かったよ、リンドウ」

『申し訳ありませんでした。今後、必要と思われる時は、私の方で各種保護魔法を使用するように致します』

「うん。頼んだよ」


 リンドウに一声かけて、前を飛んでいるトパーズを追いかける。

 わざわざ後ろを見なくても様子がわかるのかな?

 僕を突き放すように、トパーズはさらに速度を上げた。

 ちょっと怖いけど、ここは限界を試してみようかな……。

 大鷲の尾羽を睨みながら、もっとスピードが出ている姿を想像する。

 背中に生えた翼が大きく羽ばたき、身体が一気に加速する。

「ピーゥ‼」

「ああっ! それはずるいよ〜」

 もう少しで追いつこうかというところでトパーズは大きく鳴いて、ロック鳥の姿に変身した。

 後ろからだと顔は見えないけど、なんとなく、トパーズもこの状況を楽しんでくれてるような気がする。


 チラリと後ろを確認すると、陸が見えなくなっていた。

 ……どれぐらい速度が出てたんだろう?

『一番速い時で、時速341キロを記録しました』

 計っててくれたんだね。ありがとう、リンドウ。

 ……生身の身体で新幹線超えかぁ。魔法ってすごいな。

「翼の扱いにも慣れた気がするし、そろそろ帰ろうか……。トパーズ! 帰りは乗せてもらえるかな?」

「ピーゥ! ピーゥピーゥ‼」

 うまく速度を合わせてトパーズの背中に乗って、あとは屋敷までお任せ。

 自分の翼で空を飛ぶのも悪くないけど、やっぱりトパーズに乗せてもらう方が良いな。落ち着くし、景色も楽しめるし。

「ピーゥ……。ピーゥピーゥ……」

 トパーズも喜んでくれるみたいだし。


 屋敷に戻った僕とトパーズを、マイヤーが出迎えてくれた。

 急に速度を上げたからびっくりした?

 追いかけたけど、とても追いつけなかった?

 ひとこと言っておくべきだったか……。ごめんなさい。

 ルビィは……ずっとそこで、お昼寝してたんだね。

 それだけ信頼されてるのかな?

 ……眠かっただけなの? ルビィらしいなぁ。


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