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6 冬の城へ

 これから転送魔法で出かけて今日はそのまま外泊することを、マイヤーから屋敷のみんなに伝えてもらった。

 その間に僕は、出かけてくることをトパーズに伝えて……。

 えっ? あの城は寒いから、留守番してる?

 うん、わかったよ。明日には戻る予定だから、待っててね。

 ……この前、みんなでピクニックに行ったのが良かったのかな?

 転送魔法って聞いても、トパーズは気にならなくなったみたいだ。


 全員の準備が整ったところで、工作室に移動。

 喫茶室でも問題ないと思うけど、なんとなく、慣れてる部屋から転送することにした。

 部屋に集まったのはアラベスにマイヤーにユーニスにマーガレットさん。

 そんなに期待に満ちた目で見られると、やりにくいんですが……。

「コネクトスペース!」

 いつものように軽く腕を振りながら呪文を唱えると、鮮やかに輝く魔方陣が工作室の床に浮かび上がった。

「本当に、天使族じゃなくても使えるのね……」

「さすがソウタ君ね。それにしても……これはすごいことよ……」

 ユーニスとマーガレットは良く似た表情で、魔方陣を見つめている。

 転送を経験したことがあるアラベスとマイヤーは落ち着いてて……。二人ともドヤ顔をしてるように見えるのは気のせいかな?

 まるで、『その驚きは経験済みです』って言ってるみたいだ。


「この、最初に空間を繋ぐところで、かなり魔力が必要になるそうです。実際に転送させる時は、それほどでもないようですが……」

「大量の魔力が使われたのはわかります。それも、私の魔力では再現できないほどのレベルで……。マーガレット様はどうですか?」

「魔力はなんとかなりそうだけど……それより、魔方陣が気になるわね。こんなに複雑な魔方陣を一瞬で構築したの? この部分は、ゲートに使われているのと同じ文様かしら?」

「ソウタ君! この魔方陣、スケッチさせてもらっても良いかしら?」

「あっ、はい。どうぞ」

 僕が返事をするよりも早く、ユーニスはリュックからノートを出して、魔方陣をスケッチしていた。

 ユーニスが使ってるノートも、前から気になってたんだよなぁ。

 時間があったら、どこで手に入れたのか聞いてみよう。



「うん、これで良いわ。それじゃあ、実際に転送させてもらえる?」

「わかりました。みんな、魔方陣に乗って下さい」

 ユーニスのスケッチが終わり、全員で魔方陣に乗り込む。

 女性四人に加えてルビィを抱っこした僕が乗っても、まだまだ魔方陣には余裕があった。

「準備は良いですか? 転送しますよ……。トランスポート!」

 観光バスの添乗員になったような気分で、呪文を唱えた。


 魔方陣の外周から光が上がってきて、全ての視界が白く染まる。

 すーっと光が静まった時にはもう、僕たちは森の中の広場に居た。

 妖しい雰囲気の木々。頑丈そうな壁。

 壁の向こうに見えている、雪に覆われた城。

「ここは……。城の前の広場かしら?」

「はい、そうです。いきなり中に転送するのも悪いと思って、前にトパーズに降ろしてもらった広場に繋げました」

「ソウタ君の屋敷から、ここまで一瞬で……? 実際に経験してみて、よくわかったわ。これは、禁止されても仕方ないわね……」

 ユーニスもマーガレットも魔法には詳しいと思うけど、そんな二人が不思議そうな顔で辺りを見回しているのが面白い。


「お嬢様! 何が起きたのですか⁉」

 二人が落ち着くのを待っている間に、城壁の門が中から開いて、執事服の男性が駆け出してきた。

 よっぽど急いでたのかな?

 表情は慌ててるし、眼鏡はズレてるし、髪は乱れてるし……。

「そんなに心配しなくても大丈夫よ、パーカー。ソウタ君に、転送魔法で送ってもらっただけだから」

「転送魔法で……? まさか、そんなハズは……」

 いまさらだけど、ここに転送してくるって連絡しておくべきだった?

 確かアラベスなら、冬の城と通信水晶で連絡が取れたはず。

 マーガレットも、何らかの方法で連絡が取れると思うけど……。

「ごめんなさい。先に連絡しておけば良かったですね」

「ソウタ君が気にすることはないのよ。びっくりさせようと思って、わざと連絡しなかったんだから」

「お嬢様っ‼」

 二人のやりとりを見てると……。巨人族の姿でもエルフの姿でも、パーカーさんにとって、お嬢様なのは変わらないんだな。

「そんな話はあとでいいでしょう? それより、今日はみんな泊まっていくから部屋と食事の用意をお願い」

「……わかりました。それでは皆様、こちらにどうぞ」



 全員が降りたのを確認して、魔方陣を消す。

 門の方へと歩きながら、僕は後ろにいるマイヤーに声をかけた。

「マイヤー。ちょっと良いかな?」

「何でしょう、ソウタ様」

「僕の専属になってからずっと、マイヤーは休みなしだったでしょ? だからこの城に居る間ぐらいは、お休みというか休憩というか、のんびりしてもらおうと思うんだけど……。どうかな?」

 可愛いメイドさんの足が止まり、金色の瞳が大きく見開かれる。

 あまり表情を変えないマイヤーが、かなり驚いたみたいだけど……。そんなにおかしな事を言ったかな?


「お気遣い、ありがとうございます。それでは明日のお昼まで、メイドとしての仕事をお休みさせていただいても宜しいでしょうか? いろいろと、友人たちと話したいことも溜まってますし」

「もちろん良いよ。僕も、のんびりさせてもらうつもりだから」

 目の前の城から僕の屋敷へと、マイヤーも一緒に来てくれて……。三ヶ月ぐらい経つのかな?

 久しぶりに会う人もいるだろうし、一日ぐらい、羽を伸ばしてのんびりして欲しい。

 今日は外で泊まるって伝えてきたから、僕の屋敷で働いてる人たちもゆっくりしてると思うし……。って、違うのかな?

 もっとはっきり、休みの日を作った方が良いのかも。

 帰ったら、エミリーさんに相談するか。


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