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3 ユーニスとマーガレット

 距離としてはそんなに遠くなかったけど、僕たちを乗せて飛んだことでトパーズは満足してくれたようだ。

 ピクニックから帰ってきた後は、元気よく森を飛び回っている。

 働いてる人たちとも前より仲良くなれた気がするし……。急に思いついたピクニックだったけど、行って良かったな。


 数日後。屋敷の近くの村で、巨大な鳥が噂になってるってエミリーさんから報告されたけど……。どうしようもないよね?

 絶対に秘密ってほどではないけど目立つのも好きじゃないので、誰かから聞かれた時は良い感じに対応して欲しいと、エミリーさんにお願いしておいた。

 きっと、エミリーさんならうまくやってくれると思う。


 あとは、特に大きな問題もなく。粘土遊びと午後の散歩で充実した毎日を送っていたところに、僕も知っているエルフの女性が尋ねてきた。二人で。



「アラベス〜、久しぶりね! あの、石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんのところで会って以来だから、一ヶ月ぶりぐらいかしら?」

「ユッ、ユーニス! 昨日の通信では、ここに来るなんてひとことも言ってなかったのに。どうして急に……」

 屋敷の二階にある喫茶室。

 ノックもなしに部屋に入ってきたユーニスを見て、アラベスはお茶を噴き出しそうになっていた。

 ユーニスの横に立っているマーガレットさんは……。落ち着いてる?

 今日は、いきなり抱きつかれるようなことはなさそうだな。

「いきなりの方がびっくりして楽しいでしょう? ソウタ君。私たちの部屋はどこかしら?」

「あっ、はい。ユーニスはそのうち引っ越してくるって聞いてたから、部屋を用意してあります。でも、マーガレットさんの部屋は……」

「私の部屋なら急がなくても、ユーニスと一緒で良いし。何なら、ソウタ君と同じ部屋でも——」

「それは駄目です!」

「マーガレット様!」

 ユーニスとアラベスがいっせいに突っ込みを入れる。

 このやりとりを聞いてるだけで、誰かを思い出すんだけど……。

 そもそも、マーガレットさんもここに住む予定なの?


「急いで部屋を用意しますので、整うまでの間、こちらでお話しされていてはどうでしょうか? すぐにお二人の分も、お茶菓子をお持ちしますから」

 マイヤーの提案を受けて、ユーニスとマーガレットも席に着いた。

 急に人が増えたけど、お茶菓子の数は大丈夫?

 いつも多めに用意してあるの? 頼りになるなぁ。



「それで……。ソウタ君」

「えっ? 僕ですか?」

 マイヤーが新しいお茶を入れてくれて、全員の雰囲気が微妙に落ち着いたところで、ユーニスから声をかけられた。

「あなた、また何か、とんでもないことをやったそうね?」

「とんでもないこと……? あっ、もしかして! 転送魔法を使えるようになったことですか?」

 ユーニスは魔法に詳しいし、転送魔法も知ってたのかな?

 天使族だけが使える秘術を使えるようになったって聞いたら、それはびっくりするかもしれない。

「転送魔法……? その話は聞いてないわよ」

 ……どうやら、違ったようだ。


「えっと……。天使の人が使ったのを見てリンドウが転送魔法を覚えて、何回か練習して使えるようになりました。あっ、でも、大丈夫ですよ。ちゃんと、女神に許可をもらいましたから」

「女神の許可……? あなたには聞きたいことが山ほど有るんだけど、まずはその話から聞かせてもらいましょうか」

 どこから話せばいいのかわからなかったので、とりあえず、アイアンゴーレムを倒したところから話を始めた。


 千年闇の森で、オニキスがアイアンゴーレムを倒したこと。

 森を覆っていた雲が晴れて、空から天使が降りてきたこと。

 ルビィを見てびっくりした天使に、浮島へと誘われたこと。

 浮島に行って、魔法の女神からいろいろと話を聞いたこと。


「ちょっと待って! 私が聞いた話と違うんだけど……。千年闇の森で、天使に祝福されただけじゃないの? ……これを“だけ”って言うのも、おかしな話だけど」

「……どこでその話を聞いたんですか?」

「バラギアン王国の先代魔王に誘われて、私とマーガレット様も王国の南東地方まで行って、ルハンナ伯爵から話を聞いてきたのよ」

「あー……! そう言えば、そんな感じで報告して欲しいってフォルデンさんにお願いしたっけ。すっかり忘れてた……」

 浮島から帰ってきた後でみんなと話をしたけど、僕は妙に疲れてて……。いろいろと丸投げしたんだよね。確か。

「女神に会った話は広めない方が良いだろうとソウタ様が言われて、私とアラベスも、その意見に賛成しました。見届け役として同行していたフォルデン様も賛同して下さって、伯爵への報告からは省略することに……」

 テーブルの横に控えていたマイヤーが、僕の話をフォローしてくれた。

 あの時も一緒に居たアラベスは、何も言わずに小さく頷いている。


「なるほど……。そういう理由だったのね。でも、私には本当の話を教えてもらえるかしら?」

「あっ、はい。わかりました」

 ユーニスはにっこり微笑んでいるけど、目元が少し怖いような……。気のせいかな? 気のせいだよね?

 横に座っているマーガレットは、ずっと穏やかな表情のままだ。


 魔法の女神から、他の女神にも会って欲しいと言われていたこと。

 屋敷に戻って体調が回復してから、転送魔法の実験をしたこと。

 天使から連絡が入って、今度は自分から浮島へと行ったこと。

 三人の女神と話をして、転送魔法を許可してもらったこと。


「三人の女神、とは……?」

「最初に行った時も会ったレムリエルさん……魔法の女神ですね。あと、春の女神と秋の女神も浮島に来てて、話をしました」

「春の女神! その話は本当なのっ⁉」

 急に立ち上がって大きな声を出したのは……マーガレットさん?


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