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1 ピクニック(前編)

「トランスポート!」

 視界を覆っていた光が徐々に薄れ、見慣れた工作室の壁が見えてくる。

 重力が変化するような感覚にも、すっかり慣れたなぁ。


「ソウタ殿! おかえりなさい」

「おかえりなさいませ、ソウタ様」

 浮島から帰ってきた僕を、アラベスとマイヤーが迎えてくれた。

「ただいま〜。ずっと待っててくれたの?」

「私はその……。ソウタ殿を待ちながらゴーレムに関するレポートを書いていたのですが、マイヤーは部屋の掃除をしてました」

「隅の方が気になったので、軽くお掃除させていただきました」

 部屋を見回すと僕がいつも粘土で遊ぶ時に使う机に、見覚えのないペンやノートが置いてある。

 ルビィの抜け毛が微妙に残っていた床は、ホコリ一つ落ちてないほど綺麗になっていた。


「そう言えば掃除の途中だったっけ。ありがとう、マイヤー」

「それで……。差し支えなければ、どんな話をしてきたのか教えてもらえないでしょうか? 浮島で、天使や女神の方々と会ってきたのですよね?」

 アラベスの視線に妙な圧を感じるけど……。女神に興味があるのかな?

 グリゴリエルさんやレムリエルさんに事情を説明して、一度、浮島に連れて行ってあげるべき?

「そうだね。二人には話しておいた方が良いだろうし……。それじゃあ、喫茶室でお茶を飲みながらで良いかな?」

「了解しました」

「すでに、お茶菓子の用意はできてます」


「ピーゥ……。ピーゥピーゥ……」

「あれっ? どうしたの、トパーズ?」

 工作室を出て喫茶室に行こうとしたところで、スズメの姿で肩に止まっていたトパーズが急に飛び立ち、大鷲の姿になって僕たちの前に降りた。

 そのまま、僕のお腹に頬ずりしてきて……。なんだか寂しそう?

「ピーゥピーゥ……」

 優しく頭を撫でてやっても、トパーズは僕の前から動こうとしない。

 かまって欲しいの? それだけじゃない?

 ……まだ床の上で光ってる、魔方陣を気にしてる?


「もしかして……。このところ転送魔法ばかり使ってたから、トパーズが使われなくなるんじゃないかって心配してるの?」

「ピーゥ……。ピーゥ……」

「心配しなくても大丈夫だよ。転送魔法は便利だけど、僕はトパーズの背中から見る景色が好きだから。遠くまで見えるし、風も気持ちいいし……。あっ、それじゃあ! 明日はトパーズに大きくなってもらって、マイヤーにお弁当を作ってもらって、みんなでお出かけしようか?」

「ピーゥ! ピーゥピーゥ‼」

「にゃあぁぁ〜」

 トパーズの鳴き声に元気が戻ってきた……かな?

 どうやら、ルビィも賛成してくれるようだ。


「急な話になるけど、アラベスとマイヤーは大丈夫?」

「もちろん大丈夫です!」

「お弁当の準備はお任せ下さい」

「それで、どこに行くかだけど……。ん〜……。僕は思いつかないから、屋敷で働いてる人に、おすすめの場所を聞いてもらえるかな? 良い感じにここから遠くて、景色が良くて、のんびりお弁当を食べられるような場所で」

「了解しました。このあとすぐ、話を回しておきます」

「ついでに、トパーズに乗ってみたい人が居ないか聞いてみて。僕たち三人は確定として、あと五人ぐらいは乗れると思うから。大丈夫だよね? トパーズ」

 僕たちがトパーズに乗って移動する時、屋敷で働いてる人たちが見送ってくれるんだけど、その中に、なんだかうらやましそうな顔をしてる人が居るのが気になってたんだよね。

 無理にとは言わないけど、乗ってみたいのなら乗せてあげたい。


「ピーゥピーゥ! ピーゥ‼」

「えっ? もっと多くても大丈夫? 本当に? それじゃあ、人が増えた時はがんばってね」

「ピーゥ‼」

 ピクニックの話を聞いただけで、トパーズは元気が出たようだ。

 頬ずりにも力が入って、壁まで押されそうになってしまう。

 何故か、マイヤーも気合いの入った表情をしてるけど……。たまにはこういうイベントも良いよね?


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