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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第一章 初めての異世界・初めての出会い
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9 初めての村

 ベテラン猟師のカルロから聞いた話だと、獲物を狩った時は急いで処理するのが大事らしい。

 若いマルコに手順を説明しながら、カルロは鉄爪熊(アイアンクローベア)の血抜きをして、内臓を手際よく取り出す。

 最後は三人がかりで巨体を押して、身体を冷やすために滝壺へと沈めた。

 もっとも、僕はあまり力になってなかった気もするけど……。

 この世界で生きていくのなら、もっと身体を鍛えるべきか?

「ふにゃー……」

 じっと、自分の手を見ていた僕の横で、ルビィが可愛い声で鳴いた。

 鍛えても無駄ってこと? そんなぁ……。


「よし、今日はここまでだな。明日、人手をそろえて引き上げに来るぞ」

「わかりました、親方」

 滝壺の中まで入った二人は手や足をタオルで拭いて、荷物を肩に掛けて帰り支度を進めている。

「坊やも——。いや、助けてくれた相手を坊や扱いは悪いな。確か、名前はソウタだっけ? 一緒に村まで来てくれるかい?」

「そうさせてもらえると助かります。本当に、行く当ても無かったので」

 急いで自分のリュックを背負うと、ルビィが胸に飛び込んできた。

 いろいろあって疲れたのかな? 自分で歩く気はなさそうだ。

 トパーズは大空へ舞い上がり、気持ちよさそうに空を飛んでいる。

 二頭の犬も落ち着いたのか、出発するのを楽しそうに待っている。

 猟師たちが犬のリードを手に取って、出発する準備が整った。


         ☆


 小川に沿って森の中を下っていく。

 一時間ほど歩いたところで流れを離れ、森から出た。


 鮮やかな緑の草原。まばらに生えた木々。

 遠くに見える険しい岩山。高くて美しい青空。

 深い森を抜けるとそこには、ずいぶん前にテレビで見たスイスのような光景が広がっていた。

 道らしい道はないが猟師たちには通い慣れたルートらしく、緩やかな草原を迷うこともなく下りていく。

 その間に僕は、猟師たちからいろいろ話を聞いた。


 二人が住んでいるベレス村は人口が五百人ほどで、山羊や羊の牧畜が主な産業らしい。牛もいるが数は少なめ。広い草原を使って家畜を育てるだけでなく、羊毛や牛乳の加工まで村の中で行っている。

 村に向かっている間にも、のんびり草を食べている羊たちが遠くに見えた。

 カルロやマルコのような猟師は森に入って獲物を狩ったりもするが、どちらかというと、家畜が襲われないように見回るのがメインの仕事らしい。


 話に混ざる情報を総合すると……。ここは、僕が勝手に想像していた『剣と魔法の世界』よりも、もっと文化的に進んだ世界のようだ。

 夜には灯りをともす魔法を使い、料理には火の魔法を使う。

 氷の魔法を使った冷蔵庫のようなものまであるらしい。

 簡単な魔法なら、村人の三人に一人ぐらいが使えると。

 どんな魔法が『簡単』のレベルなのかはわからないが……。


「村が見えてきたぞ……。あの一番大きい建物が、村長の屋敷だ」

 山小屋として使っているらしい、古いログハウスの横を抜ける。

 そこから先は斜面が少し急になっていて、いくつもの家が建っていた。

 木製の家が多いが、レンガ造りの建物も混ざっている。

 いくつもの家を繋ぐように細い道が通っていて、その先に、ひときわ大きな建物が見えている。

「小さい村だから、客が泊まるような施設はなくてな。村長に紹介するから、そのまま泊めてもらうと良い」

「ソウタさんの活躍を聞いたら、村長の方から泊まっていくように言うと思いますよ。本当にすごかったですから!」

 なんだか、過大評価されてるような気がするけど……大丈夫かな?

 どこから来たのかもはっきりしてない、ただの一般人なんだけど……。

「ピーゥ……。ピーゥピーゥ……」

 上空を飛んでいたトパーズが、気持ちよさそうに鳴いた。


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