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バーレシアと四つの小国  作者: はと
第一章
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アクサネス

智の国、アクサネスに住むポーマスは、デドロンのマルフィーから届いた正式な大樹の調査依頼を勝手に深読みし、絶望していた。それでも、引き受けなければならない。現実は、実に厳しいのである。

 バーレシアの叡智が集まる国、アクサネス。この国では知識こそが力を持っており、国民の殆どは家に家族の人数以上の本棚を抱えている。また、国民の八割が眼鏡着用者だ。

 そんなアクサネスの頂点に立つ男の名を、ポーマスと言う。イーティスやマルフィーより五つ歳下の彼は、四歳にして聖書を全て覚え、六歳の頃にはバーレシアの国々の法や文化を覚えたという。ポーマスの知識はバーレシア全土の図書館四つ分とは、彼の膨大な知識への賞賛から生まれた言葉である。

そんなポーマスはというと。


「宣戦布告だよこれ、間違いないよ。僕は詳しいんだ、こういう文書は裏の裏の裏を読む前提で書かれてる。ほらコレ見てよ、この一文。大樹の異音調査にて、貴国の智を頼りたい。これ絶対智って書いて血と読ませてるよ、僕には分かる。これは血祭りへの招待状だよ……!!」


 執務室の机の下に隠れて、頭を抱えていた。


「だってこの前の議会ですんごい睨まれたもん。すんごい。そりゃさ、確かに僕はデドロンの提唱した法案を却下したよ?でもさ、あれ穴だらけだったんだもん。チーズかな?ってくらい穴だらけだったんだよほんとに。わざとやってんの?って思ったもん。だけど気付いちゃったら流石に言わない訳にはいかないっていうか、正直アクサネスにも不利益とか面倒が被ってくるなって分かったしさぁ……あー……これだから議会とか嫌なんだよ……。」


 バーレシアで最も思慮深いとされるポーマスは、バーレシアで最もマイナス思考な男でもあった。ちなみに、マルフィーは議会で自国の起案を却下された事など何一つ怒っていない。あれはどちらかと言うと娘自慢の止まらぬイーティスへのささやかな意趣返しであり、それに対して見事な意見を出したポーマスにはむしろ感心していた。だが、あまりにも真顔過ぎてポーマスには睨まれたようにしか映らなかったが。


「しかし、これはデドロンからの正式な調査依頼ですよ?断るわけには……。」

「わかってるよぅ……!!」


 うう、と呻きながらもポーマスが机の下から顔を出した。どんなに喚こうとも、国から国への正式な申請、それも国宝扱いとされる大樹に関する事であれば断ることはそのまま敵対の意志と見なされても文句は言えない。そんな事、ポーマスでなくとも分かっていた。

 それに、この国は知識欲の塊である。


「……うう、せめてマルフィー様が居ないなら良いのに……。」

「無理でしょうねぇ……。」


 国宝扱いの案件に、国の代表が関わらないわけがない。そしてそれはこちらも同じであり、アクサネスも指折りの者を向かわせなければならない。

 つまり、ポーマスは絶対に来い、というお誘いなのだ。


「みんな……僕の骨は、図書館の庭に撒いてね……。」

「いえ、不法投棄になりますので……。」

「そうだった……それを禁じたの僕だった……。」


 ずうん、と更に凹むポーマスだが、しかしすぐに気を取り直して指示を出した。


「この件は僕と、木医アリス、それからロイズで対応する。悪いがアリスとロイズを今すぐ呼んでくれ。」

「アリスはともかく、ロイズもですか!?」

「ああ。ロイズは扱いこそ難しいが……彼の分析力は見事だからね。万が一木医の診療範囲でない場合に備えて連れていこうと思う。」


 先程まで嘆いていたとは思えない程の指示だが、これこそがポーマスが認められている部分でもある。

 ポーマスの辞書に、思考停止という文字はない。


「……でも死んだら骨は拾っておくれ。」

「アクサネスは土葬です。」

「火葬を禁じたのも僕だった……。」

「我が国では火気厳禁の場所が多いですからね……。」


 智の国、アクサネス。

 頭の回転が早い者で溢れるこの国では、ささいな一言すら論破されるのである。

ポーマスは優秀。知らない事があっても、すぐに対応してしまえる程に頭脳の使い方におけるスキルが全て高いタイプです。恐らく、弁論では彼に勝てる人はバーレシアには居ません。これらを踏まえ、アクサネスでは誰もが認める賢王として尊敬を集めています。ちなみにアクサネスは武力を持たぬ国なので、そこは他国と協力関係を結んでいます。

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