peace.10-4
「よーし、へなちょこ! 楽しい罰ゲームの時間が来たぜ? さあ、このお楽しみカードの中から一枚好きなの引きな?」
……嫌になるくらい楽しそうな顔をしたシロさんが、5枚のカードを僕に向ける。
真ん中の一枚だけが、妙に飛び出してて、もう怪しさが全開だ。真ん中のカードは絶対に罠だ。
ちなみにこの罰ゲームを無視しようとすると、とんでもない速さで組み伏せられて関節を外されそうになる。(経験済み)
大人しくこの罰ゲームを受けた方が、比較的マシだということを僕は思い知った。
僕が一番端のカードを抜こうとすると――、
「お? 真ん中じゃなくていいのかあ?
真ん中のカードは、俺にとってもお前にとっても、好条件な内容なのになあ。本当にそれでいいのかあ?」
悪魔のささやきだ! 罠だ! だまされるな僕!
「きっと真ん中のカードを引いておけばよかったなあって言うだろうなあ。
あーあ、せっかく教えてやったのに、真ん中のカードを引かないのかあ、もったいねえなあ。
あーあ、へなちょこだって、絶対真ん中の方が良かったって思うに決まってんだけどなあ。
そっかあ、そっちなんだなあ。へーえ、ふーん、ほーん」
「……くっ」
負けた。僕が抜いたのは真ん中のカードだ。
――――【エサになる】
そのカードには、たしかにそう書かれていた。
「…………エ、エサ……?」
「大当たりだ。おめでとうエサ。
よし、さっそく行くか、エサ」
シロさんが僕のことをエサと呼んでいる。
「シロさん? エサになる……って、どういう意味……?」
「ん? そのまんまさ。さすがに食いでがあるもん食いたくならねえ?」
僕の頭の中で、こんがり焼けた野盗の手がよみがえった。
「ぼ……っ、僕はおいしくないよっ! 全然おいしくないから! ほらみて! 腕だってなよなよのへなちょこだし……っ! 全然肉なんてついてないから! ね? ね!?」
「バーカ!」
「あだっ!」
シロさんが笑いながら、僕のおでこを指ではじいた。案の定、すごく痛い。
「俺がお前を食うとでも思ったのか? 勘弁しろよ」
あ、やっぱり冗談か……。あー、びっくりした。
「やだなあシロさん。もう、おどかさないでよ。もう、びっくりしたなあ」
「俺は食わねえよ? 俺はな?」
シロさんがにっこりと微笑むその顔を見て、僕はとんでもなく嫌なことが起きると確信したのだった。




