piece.2-1
「カイン。足、痛くない?」
「うーん。実はちょっと痛い……」
僕が住んでいた街を出て、僕とセリちゃんは道なき道をただひたすら歩いている。
街道沿いは人も多くて、ディマーズに見つかってしまう可能性が高い。だから僕たちが選ぶルートは、森の中や山の中だ。
道がないということは、人が通らないということだ。当然、歩きやすくはない。
もともとボロボロだった僕の靴は、2、3日歩き続けただけであっという間に壊れてしまった。
おかげでセリちゃんはディマーズから逃げなくちゃいけないのに、僕が足手まといになってしまっている。
でもそうはいっても僕の足の裏もかなり血だらけで、それなりにひどいことになっている。セリちゃんが応急処置で作ってくれた布巻き靴でも、もう限界だった。
毎晩セリちゃんが足の裏に薬草を貼ってくれるんだけど、歩き続けているうちにどうしても石や木の枝を踏んづけて刺さってしまうのだ。
これがちょっと地味に痛い。
嫌な痛みなんて、今までは気がつくと感じなくなっていたのに、街の外へ出てからは痛いのが痛いままなのだ。
そのことをセリちゃんに言うと、セリちゃんは困ったような悲しそうな顔をして笑った。
「痛いことを当たり前に痛いと感じることができるのは、けっこう大切なことなんだよカイン。
でないと自分が本当は死にそうになっていることにも気づけなくなっちゃうから」
「そうかなあ、痛いより痛くない方が絶対にいいと思うんだけどなあ」
だって僕の足が痛くなければもっと速く歩けるし、セリちゃんが僕を気にして何度も振り返ったり、待ったりしなくて良くなるのに。
「たぶんね、私の記憶があっていれば、もうすぐ小さな村があったはずなんだ。そこでカインの新しい靴とか服とか、いろいろそろえようと思ってたんだけど……」
僕の足を見たセリちゃんは、自分まで痛そうな顔をする。
僕は申し訳なさで胸がいっぱいになる。
「大丈夫! だんだん僕の足裏の皮、固くなってきてるし、きっとこのまま毎日歩いていればすごく丈夫な足の裏になりそうな気がする。もしかしたら岩だって踏み壊せるくらい強くなるかも!」
自信満々に言い切った僕にセリちゃんは吹き出した。
「そりゃあすごいな。ふふっ、頼もしいなカインは。
きっともうすぐだから。痛かったらすぐに教えてね。無理はしないで」
セリちゃんが気遣ってくれるおかげで、僕たちはなんとかその小さな村にたどり着くことができた。
だけど――。