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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第9章 誘起の紫 ~induction~
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piece.9-1



 重い……。つらい……。きつい……。


 僕は顔をあげる。そして、もう何回目かになる絶望的な光景を目にする。


 ――見るんじゃなかった……。


 シロさんが小さい。すっごく小さい。

 どれくらい小さいのかというと、もうすぐにでも消えてしまいそうなくらいに小さい。


 つまりシロさんと僕の距離は、ものすっごく離れてしまっているということだ。


 ……絶対、追いつけそうにない。


 また足元だけを見て進む。


 しばらく進んで顔を上げたら、もしかしたらシロさんとの距離が縮んでるかもしれない。


 そんなほのかな願いを込めて、顔をあげてみる。けれどシロさんの大きさはずっと変わらない。


 ……遠い。遠すぎるよシロさん……。


 僕は悲しい気持ちにおそわれる。


 でも、見失ったりはしない。


 すごく小さいけれど、シロさんの姿は必ず見えるところにあった。


 一応は……待っててくれてるのかな……?


 シロさんの荷物のひとつは僕が持ってるわけだし、きっとなくなったら困るはずだ。

 だからシロさんだって、僕のことを見失いたくないはずだ。


 でももう夕暮れ――。


 さすがに暗くなったら、シロさんのいるところが分からなくなってしまう。


 一人で野宿なんて、したことがない。


 僕は最後の力を振り絞って、歩くスピードを速めた。




・・・




 僕がようやくシロさんと合流できたのは、夕日が沈むギリギリのタイミングだった。


「はぁ……はぁ……シロさん……お待た……」


「おせーよ。もうメシ食っちまったし。

 残ってんのお前にやるから、後片付けしとけよ」


 寝転がっていたシロさんは、ようやく到着してクタクタの僕に、冷たい言葉を投げつける。そして僕の方を見向きもしない。


 ……まあ、優しくされても怖すぎだから、別にいいけど。


 小鍋をのぞくと、ただの白いお粥がほんの少しだけ残っている。

 僕のために取っておいたというよりは、ただの食べ残しだと思う。


 ……少なー……。


 見たところ具は入ってないし、ただの粥だ。

 でも、ないよりはマシだ。贅沢は言わない。


 僕は荷物を振りほどくように置きかけて――『落としたらお仕置き』と言っていたシロさんの言葉を思い出して、そ~っと優しく荷物を置いた。


 つ、疲れた……。


 もう動きたくないと僕の体が文句を言っている。

 でも僕はなんとか残りの力を振り絞って、這うように鍋に近づくと、ちょびっとしか残っていない粥を口に運んだ。


 ――衝撃が走った。


「……え!? なにこれ! 甘い! おいしい!」


 ただの粥だと思って食べたら、めちゃくちゃ味が濃くて、しかも甘くて、すごくおいしかった。


 はじめて食べる味だった。あっという間に鍋が空になる。


 だめだ、これじゃ全然足りない……。ますますお腹が空いてきた。


「ロバリーヌに感謝しろよ。そいつの乳入り粥だ。最高だろ?」


 シロさんが言うと、返事をするみたいにロバが鳴いた。突然鳴いたので、僕はびっくりしてしまった。


 ……うう、シロさんとロバ……、ここには僕の苦手なセットがそろっている……。


 でも負けない。僕はセリちゃんに会うんだ。


 僕はくじけそうになる気持ちを、気力で奮い立たせた。

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