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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第8章 稟質の紫 〜incubation〜
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piece.8-6



 お茶を淹れ直して、もらいものの焼き菓子を出すと、僕はあらためてステラの前に座った。


「でもさ、僕と会ったときのセリちゃんは一人だったよね? どうして別行動になったの?」


 ステラはにやりと笑った。


「呪いを解いてくれる王子様探しよ。

 だって私とセリ――お姫様が二人、王子様が一人って――困るじゃない? もしセリの呪いを解いてくれるはずの王子様が、私のことを好きになっちゃったら、私とセリの泥沼になるじゃない?」


 ……どうしてこの人って、男はみんな自分に惚れると思えるんだろう……。

 ワナームさんとブライトさんのことを変態呼ばわりしてるけど、ステラだってかなり変だと思う……。


「……えーと……王子様探し? そういえばさっきもセリちゃんが呪われてるって言ってたよね?」


 とりあえず余計なことは考えないようにして、今は大事な情報を集めることに専念しよう。

 僕は、本題に関してだけステラに質問した。


「そう……セリを黒い憎しみと繋げようとする呪い。

 その呪いを解ける男性がいるって、そう星が告げてたの。その男性に会うためには、セリは私たちと別れて、一人で会いに行かなくちゃいけなかったの」


 セリちゃんの呪いを解いてくれる男の人……。よし、僕も探さなくちゃ。


「その人はどこの国の王子様なの?」


「ばっかねえ! 心の傷ついた女性の呪いを解いてくれる男の人なんて、もう運命の相手に決まってんじゃない! そういうのを運命の王子様っていうんでしょうが!」


 ……よく分からないけど、つまり本物の王子様というわけではないらしい。なら、僕みたいな子供でも、会うことができるかもしれない。


「だいたいセリはね、強烈に男運が悪いのよ。まわりにろくな男がいたことないの」


「そ……っ、そんなこと、ないと思うけど?」


 もしかして、その中に僕も入れられてる? 悪いけど僕はステラよりは性格はいいと思うし、まともだし素直だし、お金にも汚くないし、かなりましな男だと思うけど? 

 バルさんもロキさんも、みんないい人たちだと思うし……。


「おこちゃまにはまだ分からないか」


 ステラが僕のことを馬鹿にしたように笑う。


 ……お茶なんか淹れ直すんじゃなかった。お菓子も出してあげるんじゃなかった。やっぱりステラは、話をしているとイライラする……!


「どうせ僕はおこちゃまだよ! でも、その男の人に会えば……セリちゃんの呪いが解けるんだね?」


 セリちゃんが言ってた。


 自分の毒を消すために、ナナクサに会う必要があるって。


 でもナナクサは女の人だ。


 セリちゃんの言う毒が、ステラの言ってる呪いと同じものであるのなら、ナナクサがセリちゃんの毒を消せるわけじゃないってことになる。


 ということは、ナナクサがセリちゃんの毒を消せる男の人のヒントを知っているとか……?


 ――あ……!


 いた。


 ナナクサと一緒にいる男の人といえば――シロさん……!


 いやでもあの人はダメだって。あの人は呪いを解くどころか、さらに上からとんでもない呪いをかけてきそうな人だし。


「そうよ。出会った瞬間、二人は自分たちの間に強い絆があることに気づくの」


 な、なんだって……!?


 僕の頭の中で、シロさんにメロメロになってしまったセリちゃんと、そんなセリちゃんを悪魔の笑顔で迎えるシロさんが浮かぶ。


『ああ! あなたが私の王子様なのね? 嬉しいっ! 会いたかったの!』


『へえ。俺がお前の王子様? へえ~、じゃあお前は俺に何されてもいいわけだ……?』


 ダメだ! セリちゃん!! その人はダメ!! 

 すっごく悪い人だから急いで逃げてぇっ!!


 そこへさらにステラの説明が追い打ちをかける。


「そして二人はもう離れることができないくらい、お互いが必要な存在になって……」


 そ、そんな……! そんなぁっ!!


 僕の頭の中で、ラブラブになってしまったセリちゃんとシロさんが浮かぶ。


『カイン、ごめんなさい。私、もうシロと離れられない……。カインも素敵な誰かを見つけてね……?』


『やっべ、マジウケる。お前、捨てられてやんの。だっせえ! じゃあこの女は俺が好きにすっから。お前は適当にどっか行けな?』


 セリちゃんっ! だまされちゃダメだ! シロさんは本当に性格悪いし、すぐ暴力ふるうし、人の不幸を大笑いする最低なやつなんだ!! セリちゃんを幸せになんかしてくれるはずがない! 目を覚ますんだ!!


「ちょっと! 聞いてる!?」


 ステラが怒鳴っている。


「もちろん! 呪いを解くはずの王子様に、別の呪いをかけられたセリちゃんは、どうやって助ければいいの?」


「……こっのクソガキ……聞いてないわね!? あー! もう! 話、終わり!!」


 ステラがいきなりキレた。


「――え!? 呪いの解き方は……?」


 一番大事な部分をまだ教えてもらっていない。


「うるっさいわ! ほら! 雨やんでる! 子供は外で遊んできなさい!!」


 僕はステラから家の外に追い出されてしまった。


 ……どうしよう。シロさんの呪いはどうやって解けばいいんだろう……?


 僕は途方に暮れてしまった。

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