表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第8章 稟質の紫 〜incubation〜
75/395

piece.8-1

この章には猟奇的・不快と感じる描写があります。

苦手な方はご注意ください。



 ステラは物心がついたときから『星』を読むことができた。


 星と人は繋がっているから、星が読めれば、人の未来が分かるのだそうだ。


 家族の未来に起こること、どう行動すれば望む結果が得られるか、逆に叶わない願いは何なのか。

 それを幼いステラは的確に言い当てていった。


 ステラの両親は、周囲の人たちにステラを【星読姫】と呼ばせた。そしてステラに高価な衣服を買い与え、着飾らせた。ステラの家族は、ステラの能力によって、またたく間に一財を築いていった。


 ステラの噂は遠い国にまで広がり、貴族たちの間では、ステラに星読をしてもらったか否か、その結果はどうだったのかを話題にすることが流行(はや)りとなった。


 ステラの家族は、あちこちの貴族から呼ばれ、褒美をもらい、ますます裕福になっていった――――。




 僕みたいな貧乏人からしたら、ステラはすごい力を持っていて、お金もたくさんあって、羨ましい限りだった。


「いきなり自慢話?」


「違うわ。私の悲劇の始まりよ……」


 僕が嫌味を言うと、ステラは目を伏せて微笑んだ。





 ――――両親にとって、ステラはただの商品だった。


「私はね、お姫様はお姫様でも、囚われのお姫様だったの」


 ステラは、(かご)の中の鳥だった。

 親の言いなりになって、ただひたすら見たくもない他人の運命を読まされる。


 抵抗したこともあったけれど無駄だった。

 まだ幼いステラにとって、親と縁を切り、自分の力だけで生きていく(すべ)はなかったし、考えもつかなかった――――。




「それは、僕もちょっとわかるような気がする……。

 今の生き方が嫌だって思っても、他の生き方がわからなくて、結局同じ毎日を過ごすしかないっていう感じ……」


「ふふ、そう?」


 憎まれ口を叩かれるかと思ったけれど、ステラは意外なことに優しく微笑んだ。


「あんたは? 親とはどう別れたの?」


 そんな質問をされるとは思っていなくて、僕はとまどった。


 レネーマの顔をすごく久しぶりに思い出し――嫌な気分になって、途中で思い出すのをやめた。


 よく考えたら、もうずいぶんと長い間、レネーマのことを思い出さなかった気がする。


 できることなら、ずっと忘れたままでいたかった。


「……普通にお別れしたよ。さよならって」


「そう……あんた偉いわね。私とは大違い。

 私はね、家族を見殺しにしたの」


 ステラは微笑みながら言った。

 僕はそのときのステラの笑い方が、セリちゃんの表情にとてもよく似ていると思った。


 泣きながら笑顔を浮かべたときのセリちゃんの――胸が苦しくなってしまう、あの笑顔に――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ