piece.6-2
シンプルな服装に着替えたセリちゃんは、その上からフード付きマントを羽織って馬車から出てきた。
「カイン、ここで留守番してて。私ちょっと……」
「やだ! 留守番なんかしないよ! 絶対ついてくからね!」
馬車から出てくるなり、さっそくセリちゃんが僕の大嫌いワード『留守番』を口にしたので、僕はあわててセリちゃんのマントをつかんだ。
絶対に離すもんかって思ったけど、意外にもセリちゃんはあっさりオーケーしてくれた。
「ん。わかったわかった。じゃあ、一緒に行こうか。カインが手伝ってくれた方が私も助かるし。
ねえロキ? ディマーズってさ、どの辺まで来てるか分かる?」
すっかりくつろぎモードで、ステラの仲間とお酒を飲み始めていたロキさんは、しばらく思い出すように空中を見上げてから答えた。
「インパスでセリリンの目撃情報が出て、何人かインパスに行ったみたいだな。
……うーん、その連中がまだインパスにいて――、今回の騒ぎを聞きつけて――、馬を飛ばしてくるなら――……。うーん……、すっごい張り切ってる人がいたら、そうだな……。
最速で、明日の昼にはここに来ちゃうんじゃない?」
――ディマーズが来る。
僕の背中が冷たくなった。
セリちゃんが、もし捕まったら――。
僕の答えはもう出ていた。
僕は絶対にセリちゃんと離れない。
そのときは僕も一緒に捕まるんだ。
ディマーズがどんな怖い人たちだったとしても、どんな怖い目にあったとしても、僕は絶対にセリちゃんと一緒にいる。そう決めたんだ。
「了解。ちょっとカインと出かけてくる。そんなに遅くならないから待ってて」
緊張している僕とは正反対に、セリちゃんは普段と何も変わりがなかった。散歩にいくときみたいに軽いノリだ。
どうしたんだろう。セリちゃんは心配じゃないのかな……。
僕とセリちゃんはまた街の中に戻る。
街の中はまだ兵士たちがうろうろしているので、もう一度かくれんぼするみたいに進んだ。
到着したのは、グートの屋敷だった。門番はいない。屋敷の中も、誰もいないみたいに静かだった。みんなグートを刺した犯人を捜しているんだと思う。
「カイン。ちょっとこれから変なことがいろいろと起きるけど、あとでまとめて説明するから。とりあえず、まあ、流れに乗ってもらえると助かるかな……」
そうセリちゃんは説明すると、しんと静まり返った屋敷の庭へ侵入する。
そこで剣を抜くと、なぜか地面へと突き立てた。
セリちゃんは、すぅっと息を吸う。
そして――。
「かーくれんぼすーるもーの寄っといでー」
なぜかセリちゃんは、突然歌い出したのだ。




