piece.5-10
僕はそっとセリちゃんに合図すると、セリちゃんがニヤリと笑った。
「……いいタイミングでおいでなさった」
セリちゃんが音もたてずに移動を開始する。僕もその後ろをそっと追いかける。
路地の物陰には、真っ白な女の子がいた。
なんでこんなところに、女の子が一人でいるんだろう。服装もちょっと変わってる。ナナクサたちの仲間って感じではないけれど、普通の町の人って感じでもない。
「ステラ……久しぶり。一人?」
セリちゃんが声をかけた。
ステラと呼ばれた女の子は、その可憐にも見える外見からは想像できないような悪い笑みを浮かべて、口笛まで鳴らした。
「ヒュー! エッロい衣装で登場してくれるじゃないの。さすがの私もその装備は読めなかったわね! イカしてるぅ!」
見た目と口調の下品さのギャップに僕が固まってる横で、セリちゃんは赤い顔で文句を言う。
「……この服のことには触れないで。先導頼むよ、任せたステラ」
「なに言ってんのセリ。私がそんなことできるわけないでしょ。私は合流しただけ。血路を開くのはあんたの仕事。
ほら! ゴールはここから街の東側よ。急がないと捕まるわよ。そんな恰好で捕まったら、捕まるだけじゃ済まないかもね〜」
「……この……っ、相変わらず役に立たない占い師だなあ」
妙に慣れた言い合いをしている二人。会話に混ざれない僕は、誰かが近づいてくる気配にすぐに気がつけた。
「しっ! セリちゃん! 誰か来る!」
グートの門番たちがセリちゃんを探していた。どうしよう。見つかったら絶対にマズい。
「ちっ、誰でもいいから踊り子の一人でもとっ捕まえないと、グート様にえらい目に遭わされるぞ!」
「ああ、わかってるよ! ……なあ、グート様……生きてるんだよな?」
「……お前、何言ってんだよ……?」
「……いや、もし……グート様が……死んでんならさ……俺たち……今、何のために走り回ってんのかなって思っちまってさ……」
門番たちの話を聞いていたステラが、ひそひそとセリちゃんにささやいた。
「セリ……。あの二人、揺れてるわよ。ちょろいんじゃない?」
「ちょろいとか簡単に言わないでくれる? こんな格好で男の前なんかに行けるわけないでしょ!」
あのー、セリちゃん……。僕も一応、男なんですけど……。
「だ・か・ら! あんたのその珍しいセクシー装備と、胸にぶら下がってる立派なもんを使い時だって言ってんの! 色仕掛けで男の二人くらい落としてきなさいって!」
ステラがセリちゃんにつかみかかって、セリちゃんの胸を断固として守り抜いていた鉄壁の巻き布を、チョッキンと切ってしまった。
た、大変だ!! セリちゃんの胸が!! セリちゃんの胸が……っ!!
「きゃあぁぁぁ!! ヒドイ!! やめてぇぇぇえっ!!」
セリちゃんの悲鳴で、兵士たちが近づいてくる。
最悪だ……。気づかれちゃったよ!! 二人ともふざけすぎだよ! 何してるんだよ一体!!
でも、僕の目は不謹慎にもセリちゃんの胸を見てしまう。やっぱり大きかった……。真正面から見たら、想像してたよりもずっと大きかった……。
ああ! 僕のバカ!! なに考えてるんだ! こんな大ピンチな時なのに……!!
「ほら! 行ってきなさい!」
胸を押さえた半泣きセリちゃんが、ステラに突き飛ばされ、大通りへ出されてしまう。そう、グートの兵士たちの目の前に……。
大変だ! セリちゃんが大ピンチすぎる……!




