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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第35章 紐帯の藍 〜connection〜
404/410

piece.35-9



 僕の脳裏に、いつか見た夜の光景がよみがえる。


 大きなドラゴンの羽音、巻き上がる火の粉。夜を明るく染めた真っ赤な大地。


 真っ黒な闇の中へ、きらめく赤い光たちが空へと昇っていた。


 翌朝目にした跡形もなく焼き尽くされた大地。そこには骸の欠片一つ残っていなかった。



「リバーが素直に返してくれたらさあ、私がその子に謝るだけで済むからさあ、悪いこと言わないから返してくれないかなあ? リバーさあ、マイカに家族だって住んでるんでしょ? みーんな燃えちゃったら嫌でしょ?」


 脅しであってほしい。


 あの時みたいにここを焼き尽くすなんて、そんなことをセリちゃんが本当にするはずなんてない。


 だってここには住んでる人がたくさんいる。あの時の村には死んでる人しか――。


 でも僕は思い出す。


 セリちゃんの他にも炎に映っていた人影を。


 ……野盗たちが来ていた。


 村を襲った野盗たちを、どういう方法で呼び出したかは分からないけれど、セリちゃんはあの場に集めたんだ。


 その野盗をセリちゃんが殺したのか、生きたままドラゴンの炎に焼かれたのかは、もう僕には知る由もない。


 僕の表情を見たリバーさんが、両手を上げて降伏のポーズをとった。


「……分かったよ。返すよ、返せばいいんだろ?」


 鞭から解放されると、すぐに首からチョーカーを外してセリちゃんに渡す。

 店の薄暗い灯りが反射して、小さな鱗がキラキラと不思議な光を放っていた。


「ありがとうリバー。リバーならそう言ってくれるって信じてた。

 んじゃ鞭の代金払うね、これくらいでどう?」


 セリちゃんがカバンから取り出したのはお金ではなく、ちょっと変わった石のようなものや、金属の欠片のようなものだった。


 セリちゃんから解放してもらったリバーさんは、力尽きたように椅子へ倒れこんだ。

 そしてセリちゃんの()()をじっくりと鑑別した後、非難の目をセリちゃんに向ける。


「…………アンタさあ、これだけくれんなら普通に俺からチョーカー買い戻せばいいだろ?

 なんなんだよ。脅してみたり喜ばせてみたり。こっちは体が持たねえよ。ひでえ女だな、アンタ」


 僕にはガラクタにしか見えないけれど、リバーさんにとったら貴重なアイテムだったらしい。雰囲気から察するにかなり高価なもののようだ。


「あはは。まあそれはそれ、これはこれってね」


 セリちゃんはいたずらっぽく笑う。


 その表情からはもう、ナナクサの気配が消えていた。


 いつものセリちゃんに戻って、僕は一人でほっとしていた。


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