piece.35-6
「ごめんねカイン、前にレミケイドがやってたの見て、ちょっとやってみたかったんだー。
でもやっぱ、なかなか難しいんだね。ちゃんと標的を絞りつつ、広範囲に均等に意識を向けて、一発で同時に複数を攻撃って、私にはちょっとまだ無理だったね。
その場にいる全員に同じ強さで攻撃ならできたけど」
セリちゃんの『ちょっとまだ無理』という自己評価には強く抵抗感を感じてはいたけれど、今の僕にはそのことについて長々セリちゃんと意見を交わせるほどの体力はなかった。
「もう絶対にそれやらないでね。僕の体がもたないから」
とりあえず一番重要なことだけ釘をさしておく。セリちゃんも僕が真剣さが伝わったらしい。
素直に「はい、ごめんなさい」と謝ってくれた。
鍛えていたおかげで、他のごろつきたちよりも早く回復できた僕は、セリちゃんの肩を借りながら外へ出た。
「弱ってるところ申し訳ないけど、今度こそ私の用事につきあってもらうね。ここからそんなに歩かない場所にあるからさ」
セリちゃんの肩を借りながら、より道が狭くて入り組んでいる中へと進んでいく。
明らかに普通の人なら近づかない雰囲気の漂う道だ。
ガラの悪そうな人たちの暮らす区画内だとしても、さらに異様な空気感だ。
シロさんと二人で来た時も、さすがにこんなところまでは足を踏み入れなかった。
そんな場所で、ものすごく怪しい店があった。なんていうかすごく禍々しい雰囲気が出ている。正直絶対に入りたくない。かなり怖い。……かなりじゃないな、すっごく怖い。
「ついたよカイン、狭いから先に入って」
なんてことだ! よりにもよってセリちゃんの目的地はこの怖い店だったとは!
「ぅえ!? こ……ここに!?」
「そう、ほら早く入って」
容赦なくセリちゃんが背中を押してくる。
無理無理、怖いよセリちゃんから先に入ってよ。だってこれ扉開けたら普通に中からモンスターとか出てきそうだよ。
と言いたいけれど僕だってもう子供じゃない。怖いけど。
セリちゃんにいいところを見せたい一心で、僕は意を決して店のドアを開け――。
「おわ――っ! 出た――っ!」
早速モンスターと遭遇した。
「ちょっとリバー、何かぶってんの? カインがびっくりしちゃったじゃない」
僕の後ろから顔をのぞかせたセリちゃんが、モンスターに文句を言う。
さすがセリちゃんだ。このモンスターは知り合いらしい。
っていうかこんな街中でモンスターが普通にお店をやってるのってどうなの?
しかも店内は独特の臭いがする。
気分が悪くなりそうな変な臭いだった。
「うお! お尋ね者のご来店か! アンタまだディマーズから逃げてんのか? ねばるねえ!」
モンスターは自分の頭を両手で持ち上げると、突然自分の頭を首から外した。
すると中から人間のおじさんの顔が現れた――といっても顔には大きなえぐれたような傷や、妙な色に変色していたりして、町中で突然遭遇したらモンスターと間違えてしまうかもしれない見た目のおじさんだった。
それにしてもすごくリアルな被り物だ。
本物のモンスターの頭かと思った。
……もしかして本物のモンスターの頭かもしれない……。
怖いから触れないでおこう。
僕の後ろにいたセリちゃんは、狭い店内で僕をすり抜けてリバーさんのいるカウンターへと近づいた。
「一回レミケイドに見つかってディマーズに戻ったよ。そんでまた出てきたところ。だからとっくにお尋ね者じゃなくなってるんだけど、なぜかマイカには私の手配書がべたべたに貼りまくられてたの。リバー、なんか知らない?」
「俺が興味あんのは店に来てくれる客の顔だけ。金にならないことは覚えない主義だ」
「そうだったね、私はそんなにお得意様じゃないから興味ないか。
ところでリバー、殺傷力が低い武器みたいのってあったりする?
多少痛めつけても死ななくて、できればかさばらなくて携帯性のいいやつで、それなりに相手との間合いもとれるやつみたいな。そういうのなんかある?」
「あいかわらず変な注文が多い女だなあ。
……あ、でも待てよ、使いこなせる客がいなくてお蔵入りしてんのがあるが、見てみるか?」
セリちゃんが二つ返事でうなづくと、リバーさんが奥から箱を取り出した。




