piece.35-3
「……そうだったんだ。ごめんね、カイン……あのときはひどいことして」
セリちゃんがしょぼんとした顔で僕を見る。
気にしないでと言ってあげたい気持ちもあったけど、あれは僕的には結構傷ついた思い出なので、すぐに返事ができなかった。
もう二度とあんなことはしてほしくないので、セリちゃんにはもう少し反省してもらおうと思う。
「俺は納得してないね。ディマーズのメンバーでもないやつに、なんでお前のオマケみたいに二代目なんて呼び方して、仲間扱いしてんのか。みんな甘やかしすぎじゃないのか?
しかもこいつは仮にも毒持ちとして中に入って来たんだろ? 特別待遇が過ぎるだろ?」
あきらかにラノフィンは僕に敵意を向けてきていた。僕も嫌いだからちょうどいいけど。
たしかに僕はディマーズのメンバーじゃない。みんなから仲良くしてもらえたけれど、正式な仲間ではなかった。
それを面白く思わない人もいる。
それは分かってるつもりだった。
「ああ、そっかあ。ラノフィンは仕事でいなかったから知らないのかあ。だからそういうこと言うんだあ」
セリちゃんの思わせぶりな言葉に、ラノフィンが反応した。
「何がだよ?」
セリちゃんはコホンと咳払いをして、もったいぶったように話した。
「すごいんだよ。カインはね、なんとね、レミケイドにしごかれたんだよ」
セリちゃんがさらっと言った一言でラノフィンの顔つきが変わった。
信じられないものでも見たかのようにまじまじと僕を見つめ、おもむろに僕に手を出し握手を求めてきた。
「……ごめん、二代目。お前すげえな。見直したよ。さっきはお前のプライドを傷つけるようなこと言って悪かった。許してほしい。
災難……じゃなくて、見どころがあるってことだもんな、レミケイドさんにしごかれるなんて」
いま災難って言ったこの人。
言いたいことは分かるけど。
それにしても絶大なるレミケイドさん効果すごすぎる。
僕はレミケイドさんにしごかれたという事実だけでディマーズの人たち全員と仲良くなることができるのかもしれない。
ありがとうレミケイドさん。
しごかれてた時はものすごく後悔しかなかったけれど、終わってみたらあの地獄を味わった価値は十分にありました。ありがとうレミケイドさん。
でももう二度としごかれたくはありません。
「そんなことよりラノフィン? なんで私はまだ追いかけ回されなきゃいけないの? 私が捕まったらまた賞金払うつもりなの? それなら私、今からもう一回自首するからもう一回賞金ちょうだいよ」
「バカ言うな。賞金は1回だけだし本人に払ってどうするよ。あんな高額、二度と払えるか。
おかしいな、絶対に全部はがしたはずなんだけどな。じゃあどっかにはがし忘れてる手配書があるかもしれないし……よし初代、自分の手配書だ、見つけてはがして捨てといて」
ラノフィンが笑ってセリちゃんの肩を叩いた。
でもセリちゃんは怒ってその手を払いのける。
「手配書の本人が自分の手配書はがしてるのってもう怪しさ全開でしょ!? 狙われるに決まってるじゃん!
仕事に手落ちが多いよ! ゼルヤじゃあるまいし! レミケイドに言うよ!?」
そこで引き合いに出されるゼルヤさんって一体……。
「仕事の手落ちを初代にだけは言われたくないね」
そしてそんな言われ方をしてしまうセリちゃんの仕事ぶりも、ゼルヤさん並みに気になる。
しばらくセリちゃんとラノフィンの言い争いが続いていたけれど、結局セリちゃんが折れて自分の手配書を見つけて捨てることで決着がついたのだった。




