piece.35-2
ディマーズの本拠地はリリーパスの街にある。
でも、そこそこの大きさ――それがギルドの規模なのか、街の規模なのかは僕には詳しく分からない――になると、遠征先の拠点にするための出張所を持つことがあるらしい。
マイカの街もリリーパスに負けず、大きな街ということもあり、ディマーズのギルド出張所があった。
「あれ? ブラッド・バス? へー、リリーパスから出られたんだ。よくお許しが出たな、おめでとさん」
中にいたのは見覚えのある人だ。
えーと、なんて名前だったかな。
僕が思い出そうとしていると、セリちゃんが先に答えを言った。
「あっれ~? ラノフィンったらおっくれってる~! 私はもうブラッド・バスじゃないんです~!
そんなことより! 私の賞金はもう払い終わったはずでしょ? なんでまだ手配書が貼りっぱなしなの? おかげでごついおっさんたちに追いかけ回されて大変だったんだから!」
そうだ、ラノフィンさんだ。
僕がどんなに開けろって怒鳴っても絶対に門を開けてくれなかった意地悪な人だ。思い出した。
「へ? 嘘だろ? 手配書は全部はがしてるはずだぜ? そもそもナナクサの手配書をばらまくために俺たちは方々に出張ったわけだし、そのついでにお前の紙も回収したはずで……」
「はずじゃダメでしょ、はずじゃ! 現に私、街に入って早々追っかけ回されて大変だったんだから!」
「その割には元気だな。……というより、まさかまた脱走したんじゃないだろうな? 本当にお前が外に出るのをレミケイドさんが許したのか? ……なんかあやしいな。照会かけるからそこ動くなよ?
あーもう、せっかく戻る前にマイカでゆっくり羽伸ばそうと思ってたのに。
なんでこんな面倒と当たっちまうんだろ。もし俺が脱走したブラッド・バスをそのまま逃がしたなんてボスに知られたら……」
「だーかーらー! 私はもうブラッド・バスじゃないし、脱走なんかしてないんだってば――っ!
だいだいディマーズから脱走してたら、わざわざディマーズの詰め所なんかに突撃するわけないでしょ!?」
「はいはい、そうだったそうだった。ブラッド・バス時代の手配書回収して歩き回ってたから、今の呼び方忘れたんだよ。で? 今はなんて呼ばれてんだっけ?」
「初代だよ。ちゃんと覚えて」
「ああ、そうだったそうだった。ついでに二代目も誕生したんだよな」
ラノフィンさんがあまり好意的ではない視線で僕のことを見た。
「そうそう、ほら。ここに二代目もいるよ」
嬉しそうに僕を紹介するセリちゃんとは対照的に、ラノフィンさんが僕に向ける言葉は冷たかった。
「二代目ねえ……。レミケイドさんとお前が帰ってきたとき、こいつだけ門の外に出されてから、そっから夜通し、セリちゃんを返せー! セリちゃんに会わせろー! セリちゃーんセリちゃーんって、ずーっと騒いで夜になっても居座り続けて……門の外で変なのに絡まれて死なれでもしたら俺の責任になるし、早くどっか行ってくれよなーって思った記憶が強いから、変な感じだな」
……それ、セリちゃんのいる前でいちいち言う必要ある?
たった今、僕はラノフィンを嫌いになった。
だからもう『さん』なんかつけたりしない。
ラノフィン嫌い。
扉開けてくれないし余計なこと言うから嫌い。
嫌いったら嫌い。




