piece.35-1
piece35-11〜12に残酷な表現があります。
苦手な方はご注意ください。
「……おかしい……っ!」
走りながらセリちゃんは怒っていた。
だけど僕はセリちゃんに置いて行かれないように走ることだけで精一杯だ。セリちゃんに気の利いた返事をするような余裕はない。
そんな僕たちの後ろを、強そうな男たちが何人も追いかけてくる。
「……絶っっ対に……おかしいっ!」
もう一度セリちゃんは大きな声で叫んだ。でも残念だけど僕には返事をしてあげられる余裕はないので、黙ってセリちゃんと並んで走ることだけに専念する。
セリちゃんはすごい。
さっきからずっと走りっぱなしなのにほとんど息が上がっていない。
ちょっと前まで死にかけていた人だなんて言っても誰も信じてくれないだろう。
よっぽど僕の息の方が上がってしまっている。
これでも結構がんばって鍛えてたつもりなのに、いざこういう状況になってみると、僕の鍛え方なんてまだまだだったと思い知らされてしまう。
……ちょっと悔しい。
でも今はそんなことを考えているような場合ではない。
細い裏路地に身を隠したり、やり過ごしたり、不意打ちで迎え討ったり、相手を気絶させたり……いろんなことをしながら僕たちは男たちから逃げ回っていた。
僕らを追いかけてくるのは賞金稼ぎだ。
筋骨隆々で腕っぷしも強そうだし、武器も持っている。人数も多くて、いちいち真面目に相手をしていたらきりがない。
そしてマイカの街を走れば走るほど、僕たちを追い回す人数は増えていった。とてもじゃないが全員なんて相手にしてられない。
無駄に体力を落とさないように、撒ける限り撒こう。
セリちゃんにそう言われて、現状僕たちは狭苦しい路地を駆け回っていた。
でも一向に追いかけっこが終わる気配はない。
さすがに嫌になったのだろう。
珍しくセリちゃんが大きな声を出すくらい怒っていた。
なんで僕たちがこんな目に遭っているのかというと――。
「なんで……っ、なんで私の手配書が貼りっぱなしなのよ――っ!」
大きな叫び声を上げながらセリちゃんが飛び込んだのは、マイカの街にあるとある建物。
そこはディマーズの出張拠点だった。




