piece.34-13
「へえ〜、カイン、レミケイドに稽古つけてもらったんだー。
レミケイドって手加減しないからひどい目に遭ったでしょー? あはは、おつかれさまー」
と、楽しそうに笑っていたのはセリちゃん。
「あーらーらーこーらーら♪ かーわいそーかーわいそ♪」
と、全く可哀想に思っていない歌を歌ってくれたのはゼルヤさん。
「ふん! レミケイドとサシくらい、私だってある! べ、別にうらやましくなんかないからな!」
と、口をへの字に曲げて文句を言ってきたのはアダリーさん。
「バカというか、物好きというか……」
と、通りすがりにこぼしていったのはフィルゴさん。シロさんに拷問されちゃった人だ。
「……」
と、何も言わずに僕の肩を叩いて、同情的な表情だけをよこしてきたのは、悪口しりとりのジセルさん。
みんながそれぞれの反応で、ボロボロのクタクタになっている僕へ声をかけていく。
僕がレミケイドさんにしごかれたという話がディマーズ全体に広がる頃には、ディマーズの人たちの僕への扱いが、完全に仲間認定になったのを感じた。
そして僕がレミケイドさんにしごかれた翌日から、訓練場での僕への態度が豹変したのだ。
「ま、レミケイドの相手したんなら、これくらい平気だよな?」
口をそろえて、みんなが手加減してくれなくなった。
もちろん、手加減してほしかったわけじゃないけれど。
今までがお客様対応で優しくしてくれてたんだってことが分かりすぎるくらいに分かってしまうほどの豹変ぶりを体感して、僕は改めて思い知った。
レミケイドさんは、ディマーズの規範そのものだということを。
レミケイドさんがやったことは、みんな真似して良いという認識になる。
みんながレミケイドさんの行動を模範にする。
レミケイドさんがそれほどまでにディマーズのみんなから全幅の信頼を寄せられているということ――そこに至るまでの努力は並々ならぬものだったんだと思う。
毒持ちとして生きるレミケイドさん。
毒に抗いながら、毒と戦い続けているレミケイドさん。
毒持ちであるにも関わらず、ディマーズの規範として絶対的な立場にいるレミケイドさん。
ほとんど感情を見せることがないレミケイドさん。
ディマーズに戻って来てからはとても忙しそうで、誰ともゆっくり話をしている暇なんかなさそうに見える。
最近、残念だったなと思うことがある。
もっといっぱいレミケイドさんと話をしておけば良かったなって。
馬車でリリーパスに向かっていた日が、遠い昔のことのように思える。
あの当時はレミケイドさんのことが怖かったから、とてもじゃないけど雑談なんて気軽にできなかったけれど、またいつかあんな時間がとれるようになったら――。
また二人でお酒でも飲みながら、ゆっくり話をしてみたいかもしれない。
そんなふうに思えるようになった。




