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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第33章 追想の黒 〜juxtaposition〜
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piece.33-1



 セリちゃんは再現症状の克服に数日かけた後、無事に外出の許可をとった。


 ただし体調が万全ではないことを理由に、外出範囲はディマーズの巡回が最も行き届いている街の中心部に限られている。


 ただし巡回が行き届くということは、そうする必要性があるということだ。つまり人口が集中している分、大小含めて犯罪は起きやすいということでもある。

 だから巡回が行き届いているからといって油断は禁物だった。


 セリちゃんはディマーズの制服を来ている。

 明るい街並みの中、黒いディマーズの制服は嫌でも目を引いた。


 それでもセリちゃんが敢えて制服を着て外に出ているのは、ディマーズがいるというだけで犯罪を抑止する牽制の意味もあるし、他のメンバーがすぐにセリちゃんに気づけるというメリットがあるからだった。


 でも、なんだかディマーズの制服を着ているセリちゃんと街を歩いていると、セリちゃんじゃない人と歩いているみたいな変な感じになる。


 そしてそれは制服のせいだけではなく、セリちゃん自身の雰囲気が以前とは変わっていることも理由の一つだった。


 この言い方が適しているかは微妙だけれど、毒と馴染んでしまっているというか、雰囲気が妙に甘いというか、以前のセリちゃんとは印象が変わってしまったように感じる。


 こんなことを本当は思いたくはないけれど――言葉にするのであれば――『ナナクサっぽい』


 そんな印象を、嫌でもセリちゃんから感じてしまう。


「ねえセリちゃん、あんまり無理しないでね。疲れたらすぐ教えて。どこかで休憩するから」


 僕がそう声をかけると、セリちゃんは僕へ笑いかける。

 大人な雰囲気を漂わせて目を細める。

 その表情を目にした途端、なぜかシロさんを思い出した。


 急に不安になる。


 前のセリちゃんはどう笑っていたっけ。

 前からこうだったっけ。

 何がどう違ったっけ。


 心のどこかで引っかかるのに、明確な答えは僕の中にはない。それがますます僕の不安を(あお)った。


「ありがと、まだ大丈夫だよカイン。それに北の山はかなり険しいところだからね。今のうちに体力づくりしておかないと。

 もし目的地にたどり着けなかったら、クロムに笑われてしまうしね」


 メトトレイさん立ち会いの元、セリちゃんが再現症状を一人で抑え込むのに成功した翌日、レキサさんはクロムという人から届いた手紙を僕たちに見せてくれた。


 その手紙にはこう書いてあった。


・・・


 レキサやべー!

 アルカナはマジで存在した!

 速攻でセリに知らせてくれ!

 これならセリのこと治せる!

 セリが来るまでずっと待ってっから!

 絶対に伝えろよな!


・・・


 ずいぶん荒れた字体で書きなぐった手紙だったから、きっとアルカナのことが分かった時点ですぐに送ってくれたんだと思う。


 この手紙がレキサさんの元に届いたのは、3年くらい前だったと言っていた。


 そして今、クロムさんがいる北の山周辺は治安が良くないという。


 クロムさんがまだその場所に留まっていてくれるかどうか、それは行ってみなければ分からなかった。


 セリちゃんとクロムさんがどういう関係かはよく知らないけれど、セリちゃんはクロムさんの手紙をとても穏やかな目をして何度も読み返していた。


 その目は、セリちゃんがレキサさんを見つめているときとよく似ていた。


 きっと、とても仲が良かったんだろうということは、聞かなくても伝わってきた。


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