piece.30-6
メトトレイさんはお茶を一口飲むと、穏やかに微笑んで言葉を続けた。
「でもね、レミケイドと出会ってから、私の中で考え方が変わったのよ。
私がずっと敵視してきた人もまた、苦しんでる一人の人間なんだって。この人たちも苦しんでる。救われなきゃいけない人たちなんだって。
この人たちも心穏やかに生きられるようになる世界を目指すことが大切なんじゃないかって。そこからディマーズは更生に力を入れるギルドへ方針を変えたの。悪事をする人そのものではなくて、人の心の中に潜む、悪事を起こさせる『毒』に対処するギルドとして――。
うまくいかないこともたくさんあったけれど、ディマーズは結成の頃より、だいぶ変わってきたわ。私の理想に近づいている気がする。
ガランタの水のおかげで、手荒なことをしなくても毒の治療が進むようになってきたし、あとはセリさんが街の子供たちと仲良くなってくれたことも大きかった」
「え? 私ですか?」
突然名前を呼ばれたセリちゃんは、驚いたように顔を上げた。
「ほら、今パン屋をやってるレッドくんとか、食堂のママンちゃんとか。ああいう子たちの心を開いて、私たちと繋げてくれたでしょ?
幼い時期から適切な支援をすることで、治療抵抗性の毒持ちにならずに済むって証明してくれたのはセリさんよ。あの子たち、今では親や周りの悪い大人から毒されてしまった子供たちを助けてくれる手伝いもしてくれてるの。
これは私のやり方では絶対にできなかった大きな成果よ」
急にメトトレイさんに褒められたので、セリちゃんはうろたえてしまっている。
「え……いえ、私は別に……。ただ、たまたま仲良くなっただけで……」
「無意識なら余計にいいことなのよセリさん。あなたはエイジェンとは違う。排除するのではなく救えるの。人を毒から救う力を持ってるの。だから、自分を信じて。あなたの中にいる毒に負けないで。
あなたなら毒に勝てる」
とても優しい笑みを浮かべたメトトレイさんが、セリちゃんのことを見つめている。
セリちゃんは驚いたように目を開き、その目からはあふれるように大粒の涙がこぼれていった。
「……メティさんが……私に優しくしてくれるの……初めてじゃないですか……っ」
「あら失礼ね。それじゃあ、私がセリさんのことをいつもいじめてたみたいじゃない」
顔を覆って泣き出すセリちゃんを、メトトレイさんが優しくなでる。
そんな二人を、レミケイドさんは優しい瞳で見守っていた。




