peace.4-3
「カイン。体が冷えるから早く脱ぎな」
僕に声をかけながら、セリちゃんはどんどん自分の服を脱いで、部屋の天井にかけたロープに濡れた服を干していく。
「う、うん……」
僕は自分の服を脱ぎながらも、セリちゃんから目が離せなくなる。
…………セリちゃんって、色……白いなあ。
セリちゃんが胸に巻いている布も真っ白だけど、セリちゃんの体もおんなじくらい白い。薄暗い部屋の中で光っているみたいに見えて、なんていうか……きれいだなと思った。
「うわ、これも濡れたか……!」
セリちゃんは舌打ちしながら、胸に巻いている布もほどき始めた。僕の目はますますセリちゃんに釘付けだ。衝撃の光景を目にして、僕は思わず声が出た。
「セリちゃんって……けっこう胸、おっきい……」
セリちゃんの体が、びくっとなる。
胸を両手で押さえながら僕を睨む――けど、顔が真っ赤なせいで全然怖くない。むしろ……なんか、かわいい。
「おっきくない。いいからカインも早く脱ぎなさい。風邪引くでしょ。早く着替えて。風邪引いても知らないよ。早く脱ぐ早く。あと私はトーキ」
妙にセリちゃんが早口でまくしたてる。
「え? おっきいと思うよ。もったいないよ。いつもその布でギュウギュウにしてるの? つぶれちゃうよ? 苦しくない?」
セリちゃんの顔がどんどん真っ赤になっていく。すごい……どこまで赤くなるんだろう。
「いいの。つぶしたいの私は。つぶしてもう少し小さくするの!」
「そうかなあ。つぶさない方が絶対にいいと思うよ? それにつぶして小さくなるものなの?」
「…………カイン」
セリちゃんが急に真剣な表情で僕を見た。でも顔はまだ赤い。かわいい。
「え? なに?」
僕は笑いながら返事をする。
「人には触れられたくない――もしくは触れてほしくない話題っていうものがあるの。
この先私たちが一緒に時間を過ごしていく中で、これ以上踏み込まれたくない部分には踏み込まない。そういう決まりにします。今すぐ施行」
え? なにそれ? どういうこと?
「というわけで、私の胸の話は今後は絶対にしないでね。これ約束。破ったら罰ゲーム」
それだけ言うと、セリちゃんはものすごい早さで着替えを終わらせてしまった。
最後の方はふざけて罰ゲームなんて言ってたけど……。
踏み込まれたくない部分には踏み込まない――。
それってセリちゃんがどういう人かとか……そういうのを知りたいって思っちゃダメってことなのかな……。
セリちゃんがディマーズにいたときの話とか、キャラバンとセリちゃんの関係とか……。
そういう話をもっとセリちゃんから聞きたいと思ってたし、セリちゃんも、いつか僕に話してくれるって思ってたんだけど――。
それもダメってことなのかなあ……。
僕はモヤモヤし始めていた。




