piece.27-8
テントからお客さんが一人出ていった。どうやら占いが終わったようだ。
そのタイミングで、テントの中からステラの声が聞こえた。
「ワナーム、少し休むわ。区切らせて」
ステラの声を聞くのもだいぶ久しぶりだった。
「はいはい〜、了解〜っと」
ワナームさんが慣れた様子で順番待ちをしているお客たちに声をかける。
ステラの休憩のため、次の占いまで少し待つようにと説明していた。
僕がワナームさんの様子を眺めていると、ブライトさんがそっと僕を呼んだ。
テントの裏側の幕をそっとめくり、小声で中には入れと言う。
だけど――。
テントをめくった先では、仁王立ちしたステラがものすごく怖い顔で僕を睨んでいる。だから、ものすごく中に入りづらい。
「あの……ステラ? なんか……怒ってる……?」
ステラは無言で僕の胸ぐらをつかむと、テントの中へと引きずり込んだ。
ステラの力が思いのほか強くて驚いているうちに、僕はステラに押し倒されて、馬乗りにされていた。
「おうおうクソガキ、怒ってないとでも思ってたんか? ああん? あんたが乱しまくった星の動きを読むのにどれだけ苦労したと思っとんじゃい」
ああやっぱり口が悪い。このステラの感じ、すごく懐かしい。
でもステラ、前より更に口が悪くなったような気がするけど気のせいかな? 前からこれくらい口が悪かったんだっけ?
「ごめん。それはごめんって。
あ、でもね、ちゃんとセリちゃんには会えたんだよ。セリちゃんならディマ……」
「知ってるっつーの! 私を誰だと思ってんのよ。だからわざわざこっちからリリーパスまで出向いてやったんでしょーが」
「え? 会いに来てくれたの?」
「別にそんなんじゃないし! リリーパスならディマーズがいるから比較的治安も安定してるって思っただけだし! 人も多いからお金いっぱい稼げると思っただけだし! なんだったらセリにたかろうかなって思ってたくらいだし! 会いに来たのはついでよ、つ・い・で!
……ところで、セリは一緒じゃないのね」
ステラは早口でまくし立てるだけまくし立てると、話題を変えてきた。
素直にセリちゃんに会いたいって言えばいいのに。本当に素直じゃないんだから。




