peace.26-12
「やあ初代、また来たぜ」
再びゼルヤさんが客室にやってきたのは就寝時間直前だった。
「こんな時間に遊んでるとレミケイドに怒られるよ」
あくび混じりのセリちゃんは、ベッドに入り、あとは寝るだけスタイルだ。もうゼルヤさんの相手をする気はなさそうだった。
「ふっふっふ、実はそのレミケイドの許可はもらっとるんだな~」
不敵に笑うゼルヤさんの手には、セリちゃんが食べ残していたガランタ菓子。
「ちょっとやめてよ。こんな時間に2回戦なんて聞いてない!」
セリちゃんは本気で嫌そうだった。
「それな。おれも許可が出るかは賭けだったが、冷徹上司がOKしたからにゃあ本気で行くぜ。もちろん初代の安全は保障するから。よし、行くぜ」
ゼルヤさんは親指で後ろの扉を指さし、セリちゃんへ外に出るよううながす。
「……どこ行く気?」
「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれました。今宵の夜食会場は収容者区画の隔離部屋でございま~す♪」
さすがに僕は思わず口を挟んでしまった。
「ちょっと待ってください! 今収容者区画はアスパードの仲間ばっかりでセリちゃんが近づくのは危険だって……!」
ゼルヤさんが僕の口に指を近づけ、しゃべらせないように牽制してくる。
「もう全員バタンキューしておねんねだから害は少ない。夜に騒ぐ元気がなくなるように徹底的にしごいておいたからな。だが、さすがはアスパードとつるんでたやつらだけのことはある。どいつもかなり治療抵抗性が高い。
こっちは年中人手不足だし、治療にかける労力も時間も最小限で片づけたい。つーわけで、手っ取り早く体力を削ってやりたいわけなんだ。そこで初代の力を借りたい。一緒に来てくれ」
セリちゃんはベッドを降り、ディマーズの制服に着替え始めてしまった。
「作戦の一環ってことね。分かった、いいよ。アスパードの件は私の問題でもあるから。私で力になれるなら手伝わせて」
そんな! ダメだよ! ようやく元気になってきたのに、また毒の集まるところに行くなんて!
「……セリちゃん!」
「カインは部屋で待ってて。ゼルヤと行ってくる。先に寝てていいから」
ああもう! 僕はセリちゃんに留守番って言われるのが一番嫌いなのに!
「僕も行く。レミケイドさんからセリちゃんとずっと一緒にいるように言われてるから」
「お。さすが二代目。そうこなくっちゃな。
だが、このミッションはおれの指揮下だからおれの指示に従ってもらう。初代が心配だからって余計な口は出すな。それを守れるなら来い。いいな?」
いつもはふざけた雰囲気のゼルヤさんが、真面目な顔で念を押す。
僕は真剣な顔でうなづいた。




