peace.26-3
シロさんは何者か。
僕にとって、シロさんはどういう人か。
……シロさんは――何者なんだろう。
僕だって正直なところ、よく分からない。
意地悪だけどときどき優しくて、親切なところもあるなあなんて油断してると、突然罠にはめてくるような最悪な人、それがシロさんだ。
(殺して、汚れて、死ねと言われて集められたのが俺たちだ……)
いつかのシロさんの言葉が頭の中で響いた。
……言えない。
無関係の僕が軽々しく口にしていい話じゃない。
それにシロさんとセリちゃんの関係は、前にレミケイドさんに話してしまってる部分もある。
嘘は許されない。
下手にごまかせば、すぐにばれる。
僕は必死に頭を働かせた。全部は言えない。言えるわけがない。シロさんのことも、セリちゃんのことも。
「……レミケイドさんも一度会ってますよ。リアルガの町で、アスパードがいた、あの場所で……」
「ああ、あの彼か……。そうか……それなら無傷で済んで運が良かったと言うべきかもしれないな。すまないフィルゴ、時間を取らせた。もう行っていい」
拍子抜けするくらい、レミケイドさんはあっさりと引き下がった。
フィルゴさんも同様に、レミケイドさんに一礼すると鍵を開けて部屋を出ていった。扉は開いたままだ。
今までの圧迫感のある空気が消え、僕はそっと息を吐いた。
だけど、僕を油断させる罠かもしれないからもう気は抜かない。
「さて、君との話はまだ続く。かけてくれ」
僕はレミケイドさんに促されるまま、椅子へ腰かけた。レミケイドさんからはもう怖い気配が消えていた。もちろん緊張はするけど、息ができなくなるような緊張感はない。
「毒の軽い収容者は近日中にここを出てもらうことになっている。もちろん君も例外ではない。しかしそうなれば君はまたここに侵入する気だろう」
言い返す前に答えを言われてしまい、僕は正直にうなづいた。
「そして気になることが1点、君は自分にアスパードの毒が移っていると言ったな。
リアルガの町で自分が現場についたとき、たしかに君はアスパードの毒の影響を受けていた。だが、その後もう一度君と会ったときにはすでに消失していた。君はあの後、彼女の治療を受けたのか?」
「……治療? セリちゃんに……?」
「もしも彼女の治療を受けていたら、君はまともに歩くことなどできなかったはずだ。誰かに毒の治療を施されたか?」
「毒の治療じゃなくて……傷の痛みを和らげる、痛いの飛んでけってやつなら……セリちゃんにしてもらいましたけど……」
「エヌセッズの技か。そうか、興味深い……。ならば一緒に来てもらおうか」
レミケイドさんは僕を部屋から連れ出し、3階へと向かった。向かった先はセリちゃんのいる奥の隔離部屋だった。
入ってきた僕たち二人を見て、セリちゃんは目を丸くした。
「うわ。珍しいコンビだね、どうしたの? もしかしてレミケイド、夜の見張り代わってくれんの?」
「君が代わりに書類を片づけてくれるのなら喜んで」
レミケイドさんが冗談を言ったことに、僕は初めて気づくことができた。
……もしかしてレミケイドさん、実はいま機嫌が良かったりする……?
「私に書類さわらせる気なんか絶対にないでしょうが。何しに来たの? カインまで連れてきて」
セリちゃんがレミケイドさんへ警戒の眼差しを向ける。
「彼を治療してくれないか」
レミケイドさんに背中を押され、僕はセリちゃんと向かい合うように立った。
セリちゃんは僕とレミケイドさんを交互に見比べ、困惑したように眉を寄せた。




