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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第25章 潮解の黒 ~solution~
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piece.25-6



 一体、何百個のイモの皮をむいたのだろうか。

 さすがに手が痛くなった。


 とんでもなく大きな鍋が、5個も並んでグツグツと湯気を立てている。あんまり見たことがない光景だ。


「ほら新入り、口開けな。頑張ったご褒美だよ、こっそり食いな」


 ずっと僕の隣で料理をしていた女の人が、焼いたイモにチーズを乗せたものを一切れ、僕の口に放りこんだ。


「はふ! あっつ……!」


 口の中を火傷して、はふはふしている僕を見て、女の人たちがおかしそうに笑う。


「料理番の特権。余った半端食材はつまみ食いってね」


「……おいひいれす。ごちそうさまです」


 舌が熱くてヒリヒリするけど、おいしかった。

 僕がお礼を言うと、女の人たちはやっぱりまたおかしそうに笑った。


「あはは! なんだいなんだい! お行儀のいいボクちゃんだね! あんた、もしかしてどっかの良いところの坊っちゃんかい? なに悪さしてこんなとこに来ちまったのさ?」


 僕みたいなのが、こういうところに来るのは珍しいことなのだろうか。


 でも、もちろん僕はここで何か悪いことをしたわけじゃない。ただディマーズに忍び込んで見つかっただけ。

 だけどここからどうしても出たくなかったから、アスパートのことを利用させてもらっただけ。


 でもそんなことを一から説明するのもどうかと思うし……。


「……どうしてもここに、会いたい人がいて……」


 そこまで口にした途端、女の人たちが色めき立った。


「え! なにやだ! 惚れた女にでも会いに来たっていうの?」


「わざわざ悪さしてここに入りに来たって? なによあんた! 純情ねえ! かっわいいわあ!」


「んもう! めちゃくちゃかわいいじゃないの! ちょっとどこの女? ここにいる? 紹介しなさいよ!」


 …………言うんじゃなかった……。


 僕はその後、3級収容者の女の人たちにずーっと捕まり、質問攻めをされ続けてしまうのであった。

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