piece.25-5
セリちゃんに促されて下の階へ降りていくと、ディマーズのお兄さんが待っていてくれた。
「お、ちゃんと起きてきたな。えらいえらい。
ところで新入りくんは料理は得意かい? 料理当番が何人か急に休みになっちまって手が足りないんだ。だから今日のところは料理番をまかせるよ、よろしくな!」
昨日の夜のことがあったから、どんな態度を取られるのか身構えていたけれど、あっけないくらい普通な感じで話しかけてきてくれた。すごく拍子抜けだった。
「あ……はい。僕はどこでも……」
「んじゃ、料理番はあっちで並んでるやつらな。あいつらについて行って。
おーい、この新入りも今日手伝いに回すからー、よろしくなー!」
・・・
料理当番の人たちの後ろにくっついていくと、とても広い調理場についた。
みんな持ち場が分かってるのか、黙々と自分の場所へと行ってしまう。
僕は何を手伝えばいいんだろう。
「あの……」
とりあえず近くにいた人に声をかけようとして――その人の身体にあちこち大きな古傷がいっぱいあるのが目に入り、驚いて声が出なくなった。
すごく怖そうな人だ。
声かける相手、間違えたかも……!
無意識に自分の体が身構えるように硬直する。
その古傷だらけの大男は、しばらく僕を無言で見つめた後、まったく興味がなさそうに離れて行ってしまった。
「ちょっと新入り! ぼさっとしてんじゃないよ! すること分かんないならこっちに来な!」
女の人に声をかけられ、ふり返ると数人の女の人たちが僕のことを手招きしていた。
「ほら! やること分かんないなら、これの皮むきやんな! ぬめって滑るから手を切るんじゃないよ! 気をつけな!」
レネーマと同じくらいの歳の人たちだろうか。雰囲気も似ていて、ちょっとだけ緊張してしまう。
皮むきナイフを貸してもらうと、余計なことを考えないように、黙々と無心でかごいっぱいのイモみたいな塊の皮を切っていくことにした。
「へー、うまいもんじゃん!」
僕の手元をのぞきながら女の人たちが褒めてくれた。少しだけ僕の緊張が薄れていく。
シロさんからもらった小さなナイフのおかげで、ナイフの扱いはだいぶ慣れた。
今使わせてもらっている料理用のナイフの方は、いつものナイフよりも大きいし、握りがしっかりしているから使いやすかった。
シロさんも使う状況によっていろんなナイフを使い分けていたけど、やっぱり専用のものって使いやすいように作られてるんだなって改めて感心した。皮がスルスルと気持ちよくむけていく。
だがしかし、イモの数が半端ない。
「これ、全部皮むくんですか?」
「そうさ、ここのやつら全員分だからね。すごい量だろ? ここじゃあディマーズもあたしらもみんな平等、同じ食事で1日2食さ。スープとパンだけは好きなだけ食えるよ。
もしお行儀良くしてりゃあ10日に1回だけごちそうの日がある。だけどそれまでに揉めごと起こしたやつは食わせてもらえない。ごちそうが食いたきゃいい子にしてるんだね!
さ、これ全部終わらせないと普通のメシすら食えなくなるよ! さあがんばったがんばった!」
女の人は早口でまくしたてるように説明する。でもその間も手は休めずに、すごい速さで皮をむいていく。
思わずその手さばきに見とれてしまうくらいに手際が良い。
……そっか。セリちゃんも僕がこれから作るやつを食べてくれるんだ……。
そう思うと、なんだか元気が湧いてきた。
よーし! むいてむいてむきまくるぞー!
僕は気合を入れ直し、皮を再びむき始めた。




