piece.25-1
僕は気を失ったままのセリちゃんと一緒に、3階の奥の部屋へ連れて行かれた。
見張りはいない。
この部屋にいるのは、僕とセリちゃんの二人だけだ。
なんとなくだけど、僕のことをディマーズの人たちはあまり警戒している感じではなかった。
アスパードの名前を出した瞬間に、その場の空気がピリついたのは分かった。
だけど、レミケイドさんが僕を拘束するわけでもなく、僕へセリちゃんのいた部屋で朝まで待機するようにと指示を出すと、ディマーズのメンバーは淡々と各自の持ち場に戻って行った。
でももしかしたら、僕が逃げようとしてもすぐに捕まえる自信があるからってだけかもしれない。
部屋にベッドは一つしかない。
もちろんセリちゃんをそこで寝かせて、僕は適当な椅子に腰かけた。
目の前のテーブルの上には、ナイフとフォークとスプーンがたくさん置かれていて、錆のついている布切れもあった。
セリちゃん、ここで食器磨きでもしてたのかな? もしかしてこれって、実はディマーズの武器だったりする?
さっきセリちゃん、シロさんに向けてめちゃくちゃいっぱい投げてたし……。
いろんな疑問が浮かぶけど、ここには答えてくれる人はいない。
なんとなく手持ち無沙汰で、テーブルの上のフォークを磨いていると、寝ているセリちゃんが何度も寝返りを打ち始めた。
起きるのかな? なんて思って視線を向けると、セリちゃんは胸を抑え、苦しそうな表情を浮かべていた。
どうしよう……! まさか毒が――!?
嫌な予感がして、僕はあわててセリちゃんの傍に駆け寄った。セリちゃんのうわ言が聞こえる。
「……ごめ……なさ……、許し……」
セリちゃんの目尻に涙の雫がにじんでいる。
「セリちゃん? 苦しいの? 人呼んだほうがいい?」
起こした方がいいのかな。それとも誰かを呼びに行った方がいいのかな。
僕が悩んでいると、セリちゃんの手が僕の手を強くつかんだ。
「……違う……っ、ごめんなさ……っ、信じて……っ」
セリちゃんの目から涙があふれていく。苦しそうな表情。きっとすごくつらい夢を見てるんだ。
一体、どんな夢を――。




