piece.23-10
「セリさんがいた頃、みんなでディマーズの宿舎に忍び込んでセリさんの部屋に遊びに行ってたんだよ。
そん時にセリさんがよく、部屋に買い溜めしてたお菓子を並べて見張りに見つからないルートとか教えてくれてたんだよな」
「ナッツに見つかったらおしまいだったんだっけ?」
「あれ? ビスケットじゃなかった?」
「ビスケットゾーンは警備が甘い場所だろ?」
「ビスケットゾーンはレッドが見つかったせいで警備が厳重になった場所だってば」
なんだかよく分からないけれど盛り上がっている。取り残された僕にポーターが気づくと、話を振ってくれた。
「こんなヤバいのを紙に残して、もしディマーズに見つかったら騒ぎだからな。これなら突然誰かに見られそうになっても食べて証拠隠滅できるだろ?」
さっきもかき混ぜたり食べたりしてごまかしていた光景を思い出す。
「さ! 食われないうちに用件を言ってくれ。んで用が済んだら完食して解散だ。
オレたちのことディマーズが警戒してる。妹の囮もいつまで保つか分かんねえからな」
ディマーズに警戒されてるって……。
急に不安になってきた。
「ねえ、ここの人たちって……一体どういうグループなの? もしかして……ディマーズと仲が悪いの?」
心配になってレッドの顔をうかがうと、レッドは堂々と答えた。
「仲が悪いって言ったら悪いかもな。
俺たち、リリーパスの悪ガキ軍団だもんな。盗みやケンカなんか日常茶飯事。さすがに殺しまではやらなかったけど……よくディマーズに追いかけ回されてたなあ」
「元な、元。今はガキじゃねえ」
ポーターがレッドの言葉を訂正する。
そんなポーターにマップが苦笑いしている。
「なんだかんだで今はみんな仕事も住む場所もあるし、レッドなんか子供まで作っちゃったしね」
僕はそんな3人を見ていて、素直に尊敬の気持ちを覚えた。
「すごいね……。僕も……セリちゃんに会うまでは、まともな生活じゃなかったから……そこから抜け出すのがすごく大変だってこと……よく分かるよ」
「なら俺たちも似たようなもんだ。セリさんにしごかれるわ怒られるわで、なんとかまともな生き方するようになれたもんな」
「そうそう、セリさんいなかったらディマーズなんかの厄介になんか死んでもなるかって思ってたもんな。
……つまり、オレを呼んだ理由はそれか。セリさんのいる場所はどこか? ……それを知りたいんだな?」
ポーターの言葉に、さっきまでのふざけた空気が一気に引き締まる。
「なら……セリさんのいる場所は、おそらくここだ」
ポーターが指さした建物――。
僕は、嫌な予感がした。
その場所は、今日レッドとディマーズの外壁を一周したときに、悲鳴が聴こえた場所にとても近かったから――。




