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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第22章 揺動の黒 ~affection~
241/394

piece.22-10



 セリちゃんが……望んでいない……?

 僕といるのを……?


「君はもう、自分ひとりの力で生きていける。

 ディマーズと関われば君の危険が増える。君の人生を、自分が死ぬまで縛りつけたくない。これでどうか幸せに暮らしてほしいと……そう伝えるように言われた」


 レミケイドさんが僕に重たい袋を手渡してきた。

 袋の中にあるものの音で、中身がお金だということに気づいた。


 嫌な予感がする。


「……なに……? なにさ、このお金は……」


「彼女に懸けられていた懸賞金だ。全て君のものだ」


 僕はそのお金の袋を地面に投げ捨てた。


「ふざけるな! こんなの……欲しいわけじゃない! 馬鹿にするな!」


 これじゃ、僕がまるでセリちゃんのことをディマーズに売り飛ばしたみたいじゃないか!


「この街は物価が高い。もらっておいて損はない。ここを離れるにしても……」


「馬鹿にするな! 僕はセリちゃんを売ったんじゃない! 僕はお金が欲しくてここに来たんじゃない! こんな金なんかいるか! 僕も中に入れろ!」


「それはできない。彼女の意思だ」


 レミケイドさんが首を振ると、門番が僕をつかんで門の外へ引きずり出そうとする。


「ふざけんな! 離せ!」


 一度は隙をついて振りほどいたけれど、すぐに力づくで取り押さえられ、門の外へと放り出された。


 門番が僕の前に硬貨を投げてよこす。


「それで一泊して頭冷やして考え直してこい。残りの金は保管しておいてやる。

 そんな頭に血が上った状態で大金持ってふらふらしてたら、すぐに有り金持ってかれるぞ。

 お前に何かあればブラッドバスが泣く。命も金も粗末にするな」


 僕は地面に落ちた硬貨を拾って目の前の男に投げつけた。


「ブラッドバスって言うなっ!」


 思い切り顔めがけて投げつけた硬貨を、ディマーズの男は難なく手でつかんでみせた。

 そして僕に近づき、今度は無理矢理僕の手に握らせた。


「お前が生きてることが、中にいるあの人の支えになる。頭を冷やせ」


 ……なんだよ。


 なんだよ偉そうに。


 なんで、さも当然みたいにお前がセリちゃんの仲間面してるんだよ……!


 僕のほうが……僕のほうがずっとセリちゃんと一緒にいたはずなのに……!


 お前にセリちゃんの何が分かるんだよ。

 セリちゃんのことをブラッドバスなんて呼ぶような奴ら、セリちゃんの仲間でもなんでもないのに……!


 なのになんで……!

 なんで僕がこんなところで足止めされなきゃなんないんだよ……!


「うるさい! セリちゃんを返せ! お前らなんかにセリちゃんを任せられるか! セリちゃんを返せ!」


 ディマーズの男はため息をついて僕から離れた。


「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」


 固く門が閉ざされる。


 分厚い石の壁と、頑丈な扉が僕の前に立ちはだかる。


「……開けろよ……。

 ……ふざけんなっ! ここを開けろよ! さっさと開けろよ!

 くそっ! 開けろ――――――っ!!」


 僕は何度も何度も扉を叩いた。

 分厚い扉はびくともしない。


 僕は叫んだ。


 喉が潰れるくらいに。

 喉から血が出るくらいに。


 ずっとセリちゃんの名前を呼んだ。


 お願いだから出てきてと、何度も叫んだ。



 扉は開くことはなかった。


 僕がどんなに叫んでも、どんなに名前を呼んでも――。



 誰も――。



 誰も僕の声に答えてくれる人はいなかった。


第22章 揺動の黒

<YODO no KURO>

~affection~ END

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