piece.3-9
セリちゃんの傷は塞がったけれど、毒と熱のせいで、セリちゃんはずっとうつろなままだ。
食事も全然食べられていない。
このままじゃセリちゃんが死んじゃうと思った僕は、バルさんにないしょでナナクサを探しに行くことにした。
バルさんとお医者さんが、毒を持っているやつなら毒消しも持っているかも、という話をしているのを聞いたからだ。
セリちゃんを治す薬をもらいに行く。
もしも無理そうなら――盗んででもいいから手に入れてくる。
僕はそう決心した。
街の広場で宣伝のために芸をしていた踊り子に尋ねてみようと思ったら、なんとキキョウさんだった。
化粧が濃くて誰だか分からなかったのでビックリした。
ナナクサという人はどこにいるのか聞くと、キャラバンのメンバーたちは街の外でテントを張って生活しているということを教えてくれた。
「ねえ、でもなんであんたが団長に用があんのさ?」
「……えっと。チケットをタダでくれたんだ、その人。だからお礼に……」
僕のとっさの嘘に――とは言っても、本当にチケットはただでもらったのだから嘘ではないんだけれど――キキョウさんは納得したようだった。
「あー……ふーん。でもさ~、あんたカワイイから、会いに行ったら団長に食べられちゃうかもよ」
「――え……?」
それだけ言うと、キキョウさんは僕をほったらかして、宣伝のためにまた広場で踊り始めてしまった。なんでも今日がこの街で仕事をする最終日だから、いっぱいお客さんを集めなければいけないのだそうだ。
危なかった……。今日を逃したら毒消しの薬が手に入らなくなるところだった。
早く用事を終わらせなくちゃいけない。
キキョウさんのセリフが多少引っかかってはいたけれど、僕は急いで街の外を目指した。
大きなテントがたくさん並んでいたので、キャラバンの場所はすぐに分かった。
思ったよりも人がたくさんいる。
「あの、団長さんはどこにいますか? 僕、お礼を言いに来たんです」
僕はロバの世話をしている女の人に声をかけてみた。
早速ロバが僕を威嚇して鳴いた。……ロバ、やっぱり怖い。
「えー? 団長にお礼? ……うーん……団長気まぐれだしな〜。
どこにいるかって? わっかんないな〜。もしかしたらふらっと街をウロウロしてるかもよ。適当に探してみてよ」
すれ違いは困る。僕はテントの中をのぞき込みながらナナクサを探す。
ついでに、いかにも薬が片付けてありそうな場所がないかも探してるんだけれど、今のところ見つけられない。
……どうしようかな。お腹が痛くなったふりをして、誰かに薬のあるところへ案内してもらった方が早いかな……。
だんだん人が少ない場所にまで来てしまった。その時だった――。
「おい、勝手にウロウロしてんじゃねえよガキ。それじゃあ泥棒と思われて吊るされても文句言えねえなあ」
低い男の声に、僕は思わず体がすくむ。
ふり返ると、そこには若い男の人が立っていた。




