piece.21-13
朝になるまで、交代で一人ずつ見張りをすることになった。
セリちゃんもやるって言ってたんだけど、レミケイドさんが却下した。
文句を言おうとしたセリちゃんが黙らざるを得ない勢いでレミケイドさんが正論攻撃をしたおかげで、セリちゃんは大人しく馬車の中で僕の貸した毛皮にくるまってふて寝している。
最初の見張りは僕だ。
念のため、セリちゃんから護身用に剣を貸してもらった。
そう、エピーのことだ。
焚火で暖をとりながら、僕は風や虫や獣の音に耳を澄ます。
人の出す音は、本来自然の中で生きている生き物とは違う音がする。
五感を鋭く研ぎ澄ませば、目に見えない場所にいる人間の気配に気づくことができる。
それも、シロさんから学んだことだ。
視界の悪い部分には罠を仕掛けてある。
鈴が鳴れば、たぶん馬車の中にいるレミケイドさんもすぐに気づくはずだ。
「エピー? 起きてる?」
僕はそっと静かにエピーを呼んでみた。返事はない。
もしかしたら寝てるのかもしれない。剣も寝たりするのかは知らないけど。
……ん?
手に違和感を感じた。
なんとなく剣が濡れてるような気がする。
夜露かな……?
湿った手を服で拭っていると、かすかな音が聞こえた。
罠に仕掛けた鈴の音かと思ったけれど違う。
金属が当たって鳴っているような、細かな振動音――……。
『嬉しい……っ、カインが……っカインが名前覚えててくれた……っ、ぐすっ』
な――泣いてる!?
エピーが泣いてる!?
うそ! え? ちょっと待って、じゃあこの濡れてるのって涙?
あ! このカチカチ言ってるのってエピーの音? つまりエピーの泣き声的な?
え? 待って、目、どこについてるの? 涙どっから出てくんの? 中に水が入ってるの? エピーの中ってどうなってんの?
『嬉しいから、カインの質問なんでも答えちゃう。
何でも聞いて。こないだイジワルして何も答えてあげなかったから』
エピーが鼻声でしゃべる。
……エピーに鼻があるのかは謎だ。
そもそも口はどこにあるんだろう。
「やっぱりこの前、突然話をやめたのってイジワルだったんだね」
なんとなくそんな気はしてた。
今答えてくれるって言うなら、別にいいけど。
あれ? でも、何を聞こうとしてたんだっけ?
剣が泣くという衝撃的な光景を直視したショックでエピーとなんの話をしようとして話しかけたか、すっかり忘れてしまった。




