piece.20-10
食堂は遅い時間だけれど、それなりに利用している人がいた。
僕とレミケイドさんはテーブルを挟んで向き合い、しばらく無言で飲み物を飲む。
レミケイドさんの方から話がしたいと言ってきたにも関わらず、全然話し出すような素振りがない。
さすがに沈黙に耐えきれず、僕の方から口を開いた。
「あの……聞いてもいいですか?」
レミケイドさんがうなづく。
「なんでレミケイドさんは……鎖を貸してたんですか?」
夕食の時の件で懲りたので、セリちゃんの名前は出さないように気をつける。
……といっても、もう手遅れだとは思うけど。
「彼女が鎖を扱えなかったからだ」
即答されたけど、僕にはさっぱり理解できない。
レミケイドさんにも、僕が全然理解できていないことは伝わったらしい。説明を付け足してくれた。
「順を追って話そう。
彼女がディマーズに入ることを勧めたのは俺だ。彼女の中で覚醒し始めた毒を抑えるには、彼女自身が毒を知ることが一番いいと思ったからだ」
レミケイドさんはわずかに眉を寄せ、酒を一口含むと言いづらそうに口を開いた。
「だが……残念なことに、彼女には驚くほど適性がなかった」
適性が……なかった?
僕はレミケイドさんの言葉が続くのを待った。
「まず彼女は、ディマーズの鎖を扱うことができなかった。彼女の中の毒に反応して、鎖が彼女の意思に従うことを拒んだためだと思う。
仕方がないので俺のを貸した。俺の鎖なら多少慣らされていたおかげなのか、彼女でも使用することができた。それが鎖を貸した理由だ。
しかし今度は技の威力が調整できず、度を超えた威力でしか発動できなかった。
やむを得ず、当面の間の練習台として、更生不能対象を彼女の担当にした。
その対象とはつまり、回復の見込みのない重度の毒を持つ標的たちだ。
彼女は少しずつだが技の精度を上げながら健闘していた。しかし相手が相手だ、現場は荒れる。手加減をすればこちらが命取りだ。
その頃に彼女についた呼び名が……」
「……皆殺しのセリ……?」
僕の頭の中に、怖い顔をしたセリちゃんの手配書が浮かんだ。




