piece.20-5
思い出せ! なんかいろいろ教えてもらったじゃん! 痛いのとかエグいのとかヤバいのとか!
――あ、そうだ! 思い出した!
『どうせお前なんか一撃で仕留めない限り、確実に返り討ちボコボココース確定なんだから、どうせ殺るんなら一発で確実に仕留めろ。
瞬殺なんか期待してねえからせめて秒殺な』って言われて、本当の本当に一撃必殺の怖い技しか教えてもらってない――……!
シロさんのバカ! 教える技が偏りすぎだよ! 一つくらい普通の技教えてってよ! 怖すぎて使えないじゃないかっ!
「カイン、いいから座って座って」
セリちゃんが僕の服を引っ張って椅子に座らせようとする。
「セリちゃん! あぶないから僕の後ろに隠れて! せめて盾にくらいなら……!」
「もうレミケイドが片づけちゃったから平気だよ。ほら、料理も来たよ、座って座って」
「……え?」
言われて辺りを見回してみれば、僕たちに敵意を向けてきた人たちは全員床に倒れて動けなくなっていた。
え……嘘……? 一体いつの間に?
すごく静かだったし、争ってる気配なんて全然しなかったのに、なんで?
涼しい顔で息も切らさず立っているレミケイドさんへ、セリちゃんが声をかけた。
「レミケイドにしては珍しいことするね」
「君の真似をした」
レミケイドさんの返事にセリちゃんは顔をしかめた。
「うっわ、嫌味〜。レミケイドってホント時々イジワルだよね」
「事実を言ったまでだ。
ひとまず邪魔になるからこいつらを外に出してくる」
レミケイドさんは淡々と男たちを引きずり、食堂の外へと連れ出し始めた。
「よし、じゃあレミケイドがいないうちに……。
カイン、私のお皿に乗ってるお肉食べれそう? 私、絶対に食べ切れないからさ、もらってくれないかな」
セリちゃんは僕の返事を待たずに、僕の皿へと肉を移していく。
「セリちゃん、お肉1切れくらいは食べなよ。
このままじゃ体が折れちゃうよ。ちゃんと栄養とってくれなきゃ……」
「ごめんごめん。でもね、しばらくまともに食べてなかったからさ、こんなごちそうをいきなり食べたらお腹がびっくりしちゃうんだ。
ちょっとずつ食べる量増やすようにするからさ。ね、お願い!」
セリちゃんにおねだりされると、嫌とは言えない。
「んもー。ばれても知らないよ?」
僕は黙認することにした。
レミケイドさんが食堂と外を何往復かして、倒れている人たちを外に放り出し終わったので、食事タイムになった。
だけど食事が始まってすぐ、セリちゃんが咳こみ始めてしまった。




