piece.19-11
宿で軽い朝食を済ませて、町を出る準備を整えた。
まだ体調が万全でないセリちゃんを荷車に乗せて、僕たちはいったんマイカへ戻ることになった。
レミケイドさんは僕にも荷車に乗れと言ってくれたけど、自分の足で歩けるからと断った。
荷物を持たなくていいだけでも、歩くのが格段に楽になる。
いくら馬が力持ちでも、僕とセリちゃんと荷物の全部を運ぶのはきっと重たくて大変なはずだ。馬の足が遅くなったら元も子もない。
アスパードに刺されたところは、セリちゃんが今日の朝も『痛いの飛んでけ』をしてくれたから、かなりマシになっている。
あとはセリちゃんに、僕だって強くて男らしいところがあるんだぞっていうのを見せたいっていうのもある。
リアルガの町を出る前に、バルさんとオルメスさんに挨拶をした。
レミケイドさんがディマーズの増援をここに送り込むまで、ラスの二人がこの町を管理することになったらしい。
そのことが書かれてあるディマーズの委任状には、レミケイドさんとセリちゃんのサインが入っている。
これでバルさんとオルメスさんは、正式なディマーズの代理者としてここに滞在することができるし、あとでディマーズから報酬も出ることになっているらしい。
ちなみにセリちゃんは『私のサインはいらないんじゃないかなあ』と、書くのをしぶっていたけれど、バルさんの熱烈な要望があったのでサインをすることになった。
きっとバルさんは用が済んだ後も、その書類をずっと肌身離さず大事に持ち続けていそうな気がする。……ずるい。僕もほしい。なんとなく。
オルメスさんが優しそうな笑顔を浮かべて、僕に声をかけてくれた。
「おいおい、いくら若いからって無茶して動きすぎんなよ。
まあ傷口は縫っといたから簡単には開かないと思うけどな。もう大丈夫だと思ったら自分で切って抜きな」
僕はオルメスさんにお礼を言いながら、バルさんの様子をうかがいつつ、小声で話しかけた。
「あの……オルメスさん、ちょっといいですか?」
オルメスさんは何かを察してくれたみたいで、さりげなくみんなから距離をとってくれた。




