piece.18-5
セリちゃんの寝息。それと同じリズムで上下する毛布。
僕はセリちゃんが息をしやすいように、毛布からそっと顔を出してあげた。
セリちゃんは宝物のちいさな斧を、抱きしめるように抱えて眠っていた。
……セリちゃんに返せてよかった。
ほっとした途端、急に斧の柄に彫られていた名前のことを思い出した。
もしかしたら、セリちゃんが大切に思っているかもしれない――ボルターという人。
ほんの少しだけ胸がチリチリ痛いような気がした。
でも今はそのことは考えないようにする。
シロさんが僕をバカにしながら歌ってた変な歌も、思い出さないようにする。……腹が立つから。
――そういえばシロさん、今どこにいるんだろう?
シロさんの悲鳴みたいな怒鳴り声を思い出した。
(……俺が……っ! どんな……っ!)
あのあと、なんて言おうとしたんだろう。
シロさんらしくなかった。
あんな大声も――。
あんなに、つらそうな顔も――。
だってシロさん、僕と一緒にいるときにセリちゃんの話をするときは、あんな顔一度だってしたことなかった。
セリちゃんのことをアホたれとかヘッポコとか、いろんなひどい呼び方はしてたけど、あんな怖い顔で蹴り続けるほど嫌ってるようには絶対に見えなかった。
一体どうしちゃったんだよ、シロさん……。
もしかして……アスパードの毒がシロさんにうつったんじゃ……?
嫌な予感がした。
探しに行ったほうがいいのかもしれない。
でも……もしまたセリちゃんと離れたせいで、また会えなくなったりしたら――。
それは絶対に嫌だ。
シロさんを探しに行くなら、セリちゃんが起きてからにしよう。
もしシロさんがアスパードの毒にやられていたら、僕一人じゃどうすることもできない。
セリちゃんならディマーズの技で、シロさんの毒を消せるかもしれない。
シロさんをなんとかするには、きっとセリちゃんの協力が必要だ。
僕はそう自分に言い聞かせた。




