piece.17-6
「ねーねー、どーしたのさブラッド・バスー!
元気ないねー、オレの手下を皆殺しにするくらい元気なんじゃないのー? 変な演技したってオレには通じないよー?」
子供が無邪気にじゃれるみたいな、そんな口調でアスパードがしゃべっている。
「そんなにもったいぶんなら、やっぱこいつ殺しちゃうねー?」
アスパードの手が、また僕の髪を乱暴につかんだ。
「やめて……っ!」
セリちゃんが泣きそうな声で叫び、また苦しそうに咳こんだ。
「じゃーさー、オレの言うこと何でも聞くっていうの証明してよー! じゃ、さっそくそこのそいつ! 今すぐ殺して見せて! うーんと派手にね!
はーい、ブラッド・バスの惨殺ショー! パチパチパチパチー!」
アスパートに指をさされた男が、真っ青になって震え出した。
僕も状況が理解できなくなる。
アスパードが指名した男は、アスパードの仲間の一人だ。
僕はアスパードが言っていることが信じられなかった。
こいつ、自分の仲間なのに……。
「……ア、アスパードさん……? なに言って……」
指をさされた男の声が震えている。
「あ? 死ねって言ってんだよ。理解できねえのか? バカか?
ブラッド・バスの顔がオレからちゃーんとばっちり見えるように……ほら、もっとこっちに来いって。……来いよ。
おい、それ、ここに持って来い」
アスパードの声のトーンが変わった瞬間、僕の背中がぞくっと冷たくなった。
青い顔をした男たちが、逃げようとした男を羽交い絞めにする。
つかまった男は、泣き喚いて半狂乱になっていた。
「さ! 準備できたよブラッド・バス!
ほらほら! 斬り刻んでよー。お前の大好物だろ? 好きなだけ斬ってくれていいからさ、こんなやつ。
オレの大好きな血がブッシャー! って吹き出す派手なやつ! あれやってくれよー。そしたらこのガキは逃してやるってー。こんないい条件ないだろ? うわー、今日のオレってば、すっごい優しー!」
セリちゃんが、ゆっくり顔を上げた。
その顔は、死人みたいな……青白い顔だった。




