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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第17章 誅戮の黒 ~retribution~
174/395

piece.17-4



・・・・・



 顔に痛みが走る。


 僕はもうさすがに我慢の限界で文句を言った。


「シロさんっ! いい加減、顔に木の実ぶつけんのやめてよっ!」


 僕は逆さまになって吊るされたまま、シロさんに文句を言う。


「んー? 聞こえねえなあ」


 シロさんは僕の方を見向きもせず、寝っ転がった状態で木の実をぶつけてくる。

 こっちを見てもいないのに、確実に僕の目の付近にあたるのって一体どういうことなんだろう。


 ちなみに今日は手も縛られているから、ぶつけられると分かっていても手で防ぐことができない。


「いった! 痛いってもう! いい加減にしないと……!」


 シロさんが面白そうに僕を見た。


「……ほーん。『しないと』?」


「お……怒るよっ!」


 シロさんが盛大に吹き出した。


「ぶっ! ばーか、へなちょこ! なんだよそのへなちょこなキレ方は。全然怖くねえよ。

 そんなんじゃもっとかわいがられちまうに決まってんだろ。天性のいじめられっ子かお前は。

 お前みたいなへなちょこが怒ったってちっとも怖くねえんだよ。8点!」


 また木の実が飛んできてぶつかった。くそ、痛い。


 ……あ、でもようやく手首の縄が緩んできた。くっそ、今日こそ自力で脱出してやる。


「ハッタリでもいいからビビらせてみろって。一瞬でもビビらせれば形勢は変わる。たとえ本当は中身がへなちょこでもな。

 怖そうなセリフが思い浮かばないんだったら、なんでもいいからクソでかい声で怒鳴ってみろって。

 ほら。俺の手が止まるくらいのやつだよ。なんか言ってみ?

 ほらほらほらほらほら。俺をビビらせて止めてみな」


 怒涛の木の実連続投げだ。


「わ――――っ! ちょっとその数なにっ!? いった! いたたたっ!

 も――――っ! いい加減にしろ――――っ!」



・・・・・



 なにかがコツンと、頭にぶつかって――。


 僕は目を覚ましてすぐに、自分の状況を察した。


「――っ!?」


 もがいてみたけど動けない。

 腕と手が縛られている。


 場所は薄暗い袋小路の突き当りだ。

 通りに出るための道には、男たちが何人もいる。逃げるにはあの中を突破するしかなかった。


「おいおい、誰だよこいつ殴ったやつー。もう起きちまったじゃねーかよー。

 まだこれから交渉開始だっていうのにさー」


 冷たい地面に僕は座らされていた。すぐ後ろは高い壁だ。逃げ道はない。


 隣にいる男の姿を目にして、反射的に寒気がした。


 軽薄そうに笑っている男が、決してにこやかな性格ではないことは直感でわかった。


 絶対にヤバいやつだ……。


 たぶん、こいつがアスパードだ。


 全身がざわざわする。


 触られていなくても、アスパードの毒が僕に移ってくるみたいだった。


 早くこいつの近くから離れたい。息を吸うのも嫌になる。


 でも、刺激しない方がいい。


 なにがどうヤバいのか、よく分からないけれど、直感的に危険だということだけは分かった。


 ばれないように慎重に、縛られている縄の強度と結び加減を確かめる。

 かなりきつく縛られている。


 抜け出すにはちょっと時間がかかりそうだった。

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