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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第17章 誅戮の黒 ~retribution~
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piece.17-3



 いつも考えてた。

 セリちゃんに会ったら、なんて言おうかって。


 毎日考えてた。

 セリちゃんに会ったら、最初はなんの話をしようかって。


「セリちゃんのこと、ちゃんと待ってなくてごめんなさい!」


 とか。


「セリちゃん、帰ってくるの遅すぎだよ!」


 とか。


 さすがに子供っぽいから、もう少し大人っぽくて、かっこいいセリフを考えようかな……とか。


 どう言おうか、なんて言おうか、ずっとずっと毎日考えてた。



 なのに、やっと本当にセリちゃんと会えたのに、僕の口からは何も言葉が出てこない。


 セリちゃんを前にしたら、何も頭に浮かんでこなかった。


 僕の口から、『セリちゃん』という言葉だけなら、いくらでも出てきた。

 でも他には何も出てこない。


 まるで『セリちゃん』以外の、他の言葉の存在を忘れてしまったみたいだった。



「カイン……! カイン! 良かった……! 生きてた……っ!

 カインが、生きてたぁ……! 生きてたよぉ……っ!」


 僕に飛びつくように抱きついてきたセリちゃんは、びっくりするくらいに痩せていた。


 ぎゅーって抱きしめたら、折れてしまうんじゃないかって怖くなるくらいに。


「セリちゃん……」


 僕はセリちゃんの背中を優しくなでた。


 僕の指に伝わる、骨の感触。

 これじゃ……痩せすぎだ……。いったい、いつからごはんを食べていないんだろう。


 それに、ときどきすごく苦しそうな咳をする。


 セリちゃんが息をするたび、セリちゃんの胸からは、真冬に吹く風のような音が聞こえた。


 嫌な感じがした。

 セリちゃんの具合、たぶん……あんまり良くない気がする。


 まずはここを早く離れなくちゃ。


 ここは毒が強い。きっとアスパードも近くにいるはずだ。


 本当はセリちゃんより先にアスパートを殺せたらって思ったけど、セリちゃんと合流したのなら話は別だ。


 セリちゃんをこの町に長くいさせるわけにはいかない……。


 いそいでマイカへ戻って、レキサさんに――。



 突然、頭に強い衝撃を受けた。




 視界が真っ暗になる。




 遠くで、セリちゃんの悲鳴が聞こえたような気がした。


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