piece.16-4
僕はシロさんの視線を追う。
シロさんの指が地図をなぞる。どうもシロさんはマイカにつながる街道ルートが気になるらしい。
「悪くねえな。でもまあ……どうせなら、遊びに行きやすい場所がいいなあ。こういうでかい街に来やすいのって、やっぱ便利だし。
この街道脇のは宿場町か? こことか、こことか、……ここもいいな、あんたのおすすめは?」
シロさんが町や村をコツコツと爪先で弾きながらピックアップしていく。
すると、男の人の顔が曇った。
「そこは……やめとけ。なんつーか、雰囲気が悪かった」
「へーえ、どんな感じ?」
シロさんの声のトーンがわずかに変わった。
僕はシロさんが指をさしている場所を見つめた。
その町の名前は、リアルガと書かれている。
男の人は慎重に言葉を選びながら、シロさんに答える。
「……なんつーか……うーん……。
町の人間の、探るみたいな視線が不自然だったな。なんとなく嫌な予感がして、とどまらずにすぐに出発したよ。
だから詳しくは知らねえ」
「ふーん。よそものお断りって感じ?」
シロさんは、あんまり興味を示していないような素振りで、さらに情報を引き出そうとする。
「……いや。そういう感じとも違ったような気がするけど……あんまり関わりたくなかったから、俺が言えんのはこんなもんだな」
いまいちはっきりしない態度だ。
すると、シロさんが僕の顔をのぞきこんだ。
思わずドキッとした。
だってシロさんの顔が、なぜか【対女性用・罠モード】のときの顔だったからだ。
……ちょっと待ってよ。何で今それを僕に向けて発動すんの?
至近距離だともうなんか変な汗しか出ないんだけど。
嫌がらせ? もちろん嫌がらせだよね? 嫌がらせ以外に理由なんかないもんね?
離れたくてしょうがないのだけれど、肩を抱き寄せられてて逃げられない。
ああもう、今までで一番嫌な罰ゲームな気がする。
「なあ……? お前だって、ここみたいなでかい街に気軽に遊びに来たいだろ? 綺麗な服だって買いたいだろうし、珍しい食いもんだって食べたいだろ? なあ?」
罠モードの声が甘くて気持ち悪い。鳥肌たつし。
これ、言ってるシロさんは気持ち悪くならないのかな? すごい疑問だ……。
そしてシロさんの指令はおそらくこうだ。
……僕に『もう一押ししろ』ということらしい。
僕は仕方なく、散々シロさんに教え込まれた【かわいい女の子の技】をフル活用して、シロさんが目をつけた町をわざとモジモジと指で差しながら、男の人を上目遣いで見つめた。
「……わたし……もし住むならこの……リアルガって町がいいなあ……」
喉を締めて、うんとかわいい声を出してみる。
……きっとかわいい声になってるはずだ!
眼力を入れて、涙で潤ませ、キラキラさせる。
……たぶんキラキラしてるはずだ!
唇は飲み物で湿らせてあるし、ほんの少しだけ尖らせて、眉は程よく寄せる。
……どうだ! ドキドキしろ!
「……いや……たしかに街道沿いだし、なにかと便はいいかもだけどさ……。
やめたほうがいいよ? まあ、確証がないのに町のことを悪く言いたくはねえけど……危ないって」
僕の渾身のウルウル&キラキラ攻撃を受け、顔を赤らめながら目をそらした男の人は、歯切れの悪い言葉しか言ってこない。
……うーん、もう一歩か。
「え……? 危ないってどういうふうに危ないんですか? そんなに悪い町だったんですか?
そこに住んだら私……どうなっちゃうんですか? お願いします。知ってること……っ、教えてください……っ」
僕は男の人にそっと近づき、さらに両手でそっと男の人の手を包み込むように触れた。
そしてとどめのウルウル&キラキラの上目遣いだ!
お願い! この辺でそろそろおちて! もうちょっとネタ切れ限界!
「うーん、そ、そうだなあ。ちょ……ちょっと待ってて。
おい! ちょっと悪いんだけど! このリアルガって町に詳しいやついる?」
男の人の呼びかけで、周りでお酒を飲んでる人たちが話に混ざってきた。




