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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第14章 由縁の紫 ~pollution~
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piece.14-7



 カウンターに二人で並んで座り、飲み物を注文した。


 やっぱり不愛想でいかつくて人相の悪いマスターと思われる男の人は、僕たちを遠慮なくじろじろと見た。


「お二人さん、見ない顔だね。観光ならここはやめておきな」


 シロさんは頬杖をつきながらマスターに話しかけた。


「ずいぶんと子だくさんな街だな。この街はお盛んなのかい?」


「ああ? ……なんだ、女を買いに来たのか? 金があるなら街の中心に行きな。いい女がたくさんいるぜ。

 この辺の女は、使い物にならなくなってお払い箱になった女たちさ。まあ、タダ同然で好きにしたいんなら、適当な路地を探してみな。おすすめはしないがな」


 マスターはそう言いながら、僕たちの前に飲み物を叩きつけるように出してきた。


 僕はちょっとだけ嫌な気分になったけど、シロさんは気にしてないみたいだった。

 さっそくお酒に口をつけながら、またマスターに尋ねた。


「これだけガキが増えてるってことは、仕事は山ほど取れてんじゃねえの?」


「はは! あいつらはこの辺の女が産んだガキじゃねえよ。ほとんど街の外からきたガキどもだ。

 盗みはするし、女は襲うし、大人顔負けでとんでもねえよ。

 ようやくディマーズさんらが重い腰を上げてくれなさって、あいつらを保護し始めてはくれたはいいが、数が多くて手が回らんらしいよ。なんでも他の街でもガキが大量発生してるらしい」


 僕は不思議に思った。

 子供がいなくなるんじゃなくて増えている……?

 村長さんの話とは逆だ。


「そりゃあ大変だな。ガキだってバカにしてると、大人顔負けの組織立ち上げてのし上がるやつも出てくるしなあ。じゃあ、ここを牛耳ってんのもそのガキどもだったりすんのか?」


 シロさんの言葉で、なんとなく店の中がピリッとしたような気配がした。


 マスターのおじさんは苦笑いをすると、他のお客さんに聞こえないように声を抑えめにして答えてくれた。


「ちょうど拮抗ってところだな……。

 ちょっと前だったら、子供がごっそり消えるなんて噂もあったが、今は増えすぎて困ってるくらいさ。頼むから消えてくれって思うことがあるよ、ははは」


「……ほーん。なあマスター、この落書きに見覚えは?」


 シロさんがセリちゃんの描いた似顔絵をマスターに見せた。マスターの目がわずかに細くなった。


「……知ってるな? どうした? 絵でもけなして怒らせたか?」


 シロさんがそっとマスターにチップを渡す。

 情報料の金額に満足したのか、マスターはすぐに答えてくれた。


「お尋ね者を探してこっちに来たというわけか。いい勘してるな、たしかに来た。

 なるほどね、あんたらは賞金稼ぎか……。

 ガキを探してるって言って、似たような落書きを見せられたよ。すぐに捨てちまったが、そういう感じの絵だったな」


 僕の鼓動が早くなる。


「……いつ来ました? その人、そのあとどこに行くって言ってました?」 


 マスターは突然話に入った僕に少しだけ驚いたけれど、考え込んで答えてくれた。


「そうだなあ……。たしか……ここのガキが増え始めるちょっと前だった……ような気がする。

 そういえば……あの女がいなくなったあと、しばらくしてから急にガキが増え始めたな」



・・・・・



 酒場を出て、僕はシロさんと歩いた。


 もしかしたら、この街にはもうセリちゃんはいないのかもしれない。


 また、会えなかった……。


 次こそ会える。

 そう願って、叶わなくて、そのたびに胸が苦しくなる。


 きっと近くにいるはずなのに――。


「さて、せっかくでかい街に着いたし、いい宿でいい女と寝たい。それでいいよな?」


 当然のようにシロさんが提案してくる。


「オレはセリちゃんを追いかけたいから早くここを出たい。お金も節約したい。だから却下」


「はあ? おいおいカイン、お前なあ……。

 たまには休息も必要だぜ? そんで経験値も必要だ。

 しゅきしゅきだいしゅっきなせりちゅわんで本番をする前に、まずはそのへんの女で練習しといたほうがいいんじゃねえか?」


「……っ! だーかーらっ! その言い方……っ!」


「……カイン?」


 女の人の声がした。


 その声は僕の名前を、たしかに呼んでいた。

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