piece.14-6
セリちゃんの強烈なインパクトのラクガキ――――じゃなくて、似顔絵のおかげで、僕たちは順調にセリちゃんの足取りを追うことができた。
セリちゃんと近づいている実感がどんどん強くなっている。
セリちゃんが僕の似顔絵を描いて探しているということも分かった。ちなみに一応その絵は譲ってもらって、僕が大事に持っている。
……もちろん、全然似ていない。というか人ですらない。
まあ、それは置いといて。
北の街道ルートで一番大きなマイカという街に着いた。
なんとなく、僕はその街の名前に聞き覚えがあった。
いつ聞いたのかは思い出せないけれど、有名な大都市だから『知らない方がおかしいんじゃないか』ってシロさんに笑われた。
そうなのかな……?
僕はまだモヤモヤしていた。やっぱりどこかで聞いたことがある名前だった。
「なんか、ガキが多いな。どっちかって言うと浮浪児っぽいな……」
シロさんがあちこちを見回しながらつぶやいた。シロさんは、街の賑やかな広場から遠ざかるように進んでいく。
暗く、汚れた路地を選んで進む。
僕には、すごく馴染みのある風景だった。
大きな街の、光の当たらない影の部分。
親のいない子供。物乞い。ターゲットを探してぎらつく視線。
僕のよく知っている人たちがひしめき合う区画――。
ここは、僕の生まれた街によく似ていた。
「子供がいなくなるって言ってたけど、こんな感じだと……いなくなっても気づかれない気がするね……」
気がついたら死んでたとか、殺されてたなんてことは普通だった。
きっと僕だって、あの頃なら殺されたって誰も気になんかしない。
きっとレネーマだって……。
……でもどうかな。
もしかしたらレネーマなら、僕の稼ぐお金が減ったことで、少しくらいは機嫌が悪くなったりするかもしれない。
でもきっと、その程度だ。
きっとすぐに思い出さなくなるに決まってる。
「ああ、そうだな……」
そう返事をしたシロさんの声が、なんだかすごく冷たい声だったような気がして、僕は心配になった。
「情報収集ついでに酒場でも寄るか」
シロさんが嬉しそうな顔をして、僕を酒場に誘う。
「シロさんはお酒を飲むついでの情報収取でしょ」
「どっちだって同じだろ?」
いたずらっぽく笑うシロさんは、いつものシロさんだった。
薄暗い酒場に入ると、怖そうな男の人たちがこっちを一斉に見た。
少しだけ動揺したけれど、たぶん表情には出さなかったと思う。
だって、もし僕がオドオドしたせいで相手からなめられて、その流れで絡まれちゃったり、ケンカとか売られちゃったりしたら……!
絶対にそのあと、シロさんのお仕置きフルコースが待っている……。
考えるだけで寒気がした。
いまこの店の中で、一番強くて一番ヤバくて一番恐ろしい相手はシロさんだ。それは間違いない。
そう思えば、いかつくて人相の悪い男の人たちも空気のように思えた。
昔は怖くてしょうがなかったものが、今はそこまで怖くはなくなっている――。
僕……もしかして、少しは成長したのかな……?
なぜか急にそんなことを考えてしまった。




