piece.14-4
北行きの街道をめざしながら、僕はなんとなくシロさんに尋ねてみた。
実はずっと村にいるときから気になって仕方がなかったことがあった。
「ねえシロさん。オレ、もしかして背が伸びた?」
「気のせいじゃねえの」
シロさんはこっちを見もしないで即答する。
「そうかな……。言われてみれば、初めてシロさんに会ったときって、シロさんの方が背が高かったけどさ。
いま並んでみるとさ……あ! ちょっと! シロさん! 離れていかないでよ!」
シロさんの隣に並んで背を比べようとしたら、シロさんが速足になった。
「気のせいだから気にすんな」
シロさんは僕の方を見向きもせず、淡々と進んでいく。
「気になるよ。もしかしたらオレの方がシロさんより背が高いかもしれないじゃん」
僕もシロさんの速度に合わせて足を速めて、もう一度横に並ぶ。
「んなわけねえだろ。調子に乗んな」
「じゃあ背比べてみようよ」
シロさんがさらに足を速めた。
「必要ねえ。俺のが高い。ほら、お前のしゅきしゅきだいしゅきなセリちゃんが待ってんだろ? くだらないこと言ってないで急ぐぞ」
シロさんは僕に追いつかれないようなスピードでずんずん進んでいく。
なるほど。この話をしながらだとシロさんは先を急いでくれるわけか。
これなら予定よりも早くセリちゃんと合流できるかもしれない。
僕はシロさんの後ろでこっそり笑顔になりながら、シロさんを追いかけた。しつこく身長の話をし続けながら――。
・・・・・
「やべー。マジで疲れた……」
シロさんが地面に大の字でひっくり返っている。
僕も足が痛い。ちょっと調子に乗ってハイペースで歩き続けてしまった。明日はもう少しペースを落として移動しなくちゃダメだ。
「はいシロさん、ごはんできたよ。……ずるいよ、一人だけ休んでさ」
「うるせー。お前が追いかけてくっからだろ」
「シロさんが逃げるからだろ」
「逃げてねえよ」
シロさんが身体を起こして、僕からお椀を受け取るついでにデコピンをしていった。……痛い。
シロさんはあっという間に麦粥を平らげると、今度は村長さんから分けてもらったお酒を飲み始めた。
「……お、なかなか美味い葡萄酒だな。もう少しいただいてくるんだったな。
お前も飲むか?」
シロさんが葡萄酒の入った革袋を渡してくれる。僕は少しだけ口に含んで飲み込んだ。
思ったとおり、一気に喉からお腹が熱くなった。
そんなにたくさんは飲めそうにない。
僕はすぐにシロさんに葡萄酒を返した。
シロさんが受け取ろうとしたタイミングに合わせて、僕は言った。
「…………シロさんはさ、なんでオレのところに来たの?」
シロさんとしっかり目を合わせて尋ねてみた。
一瞬だけ、シロさんの眉が寄った。
シロさんは葡萄酒の皮袋を受け取ると、袋の口を縛って、自分の横に置いた。
そしてため息をつきながら、横になってしまった。
話したくないオーラが全開だ。
もしかしたら、このまま寝たふりをする作戦なのかもしれない。




