piece.14-3
シロさんの道案内のおかげで、普通に引き返すよりも短い距離と日数で村まで戻ってくることができた。
その代わりに、ものすごく険しい道を延々と歩かされたけど。
でも僕は少しでも早くセリちゃんの手がかりが欲しかったから、そんなことは全然苦ではなかった。
むしろシロさんに感謝している。
ただし心の中でだけだけど……。
久しぶり戻ってきた村は、すごく懐かしかった。
セリちゃんを追いかけて、この村を出てからどれくらい経ったんだろう。かなりの月日が経ってしまった気がする。
この村に到着して、セリちゃんと離れ離れになってる時間の長さを痛感した。
通りかかった村の人が、僕に気づいて声をかけてくれた。
「あれ? お前、もしかして大地の女神の小僧か?」
「ん? 大地の女神?」
シロさんが『女神』のキーワードにものすごく食いついた。僕は即座にシロさんから目をそらす。
「おおー! しばらく見ないうちに、でかくなったなあ小僧。大地の女神の恵をたっぷり吸わせてもらってるからか? 今度ちゃんと紹介しろよ?」
これだけ時間が経っても、まだその噂が健在なことに僕は頭が痛くなった。……もう勘弁してほしい。
「おいカイン。なんだよその大地の女神って女は。俺にも紹介しろ。独り占めすんじゃねえよ。なに吸わせてもらってんだよ、教えろよ」
シロさんがやたら女神に反応する。
「その話は今はいいから! あの、オレ……じゃなくて、僕と一緒にここにいた人たち、どこに行ったか知りませんか?」
「小僧が全然帰ってこないって騒いでたあと、みんなここを出ていっちまったぞ? 探しに行ったんだと思ってたが、合流できなかったのか?」
村のおじさんが心配そうな顔をして僕たちを見る。
……やっぱり。覚悟はしていたけど、会えなかった……。
「行き先は村長が知ってるかもしれないから、会いに行ってみな。この時間なら家にいると思う。あいつらに会えるといいな」
僕はおじさんにお礼を言って別れると、村長さんの家にお邪魔した。
出迎えてくれた村長さんは僕を見て驚いた。
「まだ会えていなかったのか……。みんな心配していたぞ?
ああ、そうだった。星読姫から君宛ての手紙を預かっていたんだ。もし戻ってきたら渡してくれと」
ステラ……! そうだ! ステラなら僕がこんな状態になっていることを予測して、なにかヒントとかお告げみたいなのを書いてくれてるのかも!
僕はステラからの手紙を受け取り、急いで中を開けた。そこには殴り書きでこう書いてあった。
『こんのクソガキャア! 私の星読をここまで無視したのはあんたが初めてじゃあボケエ! あんたが勝手なことしてくれたおかげで星が騒いで大変なことになっとんじゃあ! 責任取れぃクソガキ!!』
……ヒントはなにひとつ書いてなかった。
「うっわ。すっげえきったねえ字だな。
星読姫なんつーからもっと清楚な女を想像してたぞ俺は。どんなおっさんだよ、こいつ」
シロさんが手紙をのぞき見しながら笑っている。
僕にとっては全然笑いごとじゃない。
「村長さん! セリちゃんは? セリちゃんはここに戻って来ませんでしたか?」
「彼女なら戻ってきた。だが、君がいないと知って、かなり動揺して、そのあとまたすぐにこの村を出ていった」
「それどれくらい前の話ですか? 行き先とか聞いてませんか? どこに行くって言ってましたか?」
「彼女がここに来たのは……たしか……三月か、四月くらい前だったかもしれん。
君が知らない男と村を出たと聞いて、さらわれたと考えておった。なんでも北の村や町では子供が次々に消えるなんて噂がある。君をさらった男の手がかりがあるかもしれないと、北を目指すと言っていた」
僕のせいだ。
僕がセリちゃんとの約束を破って、ちゃんと待ってなかったから――。
セリちゃん……ごめんね。
すぐに追いかけるから。
追いついて、約束破ったこと必ず謝るから……!
「ありがとうございます。すぐ追いかけます」
「待ちなさい。疲れてないかね? 泊まっていかないか」
「いえ、急ぐので。ごめんなさい」
すぐに出ていこうとする僕のことを、村長さんが呼び止めた。
「なら食料を持っていきなさい。君たちのおかげでこの村もだいぶ豊かになった。好きなだけ持っていきなさい」
僕たちは村長さんのご厚意に甘えて、持てるだけの食料を持たせてもらった。




