piece.14-1
明るくなって、ようやくシロさんが目を覚ました。体は起こしたけれど、顔はまだ寝てる。
あいかわらずシロさんは寝ぼすけだ。
「おはようシロさん。お茶飲む? たぶん、もう少しでシロさん好みの温度になると思うよ」
「おー……でかした。くれー」
シロさんが眠そうな顔のまま、お茶を受け取ろうと手を伸ばす。僕は手渡そうとしておいて、直前でひょいっと回収した。
寝起きのシロさんが無言で睨んでくる。そんなシロさんに僕は笑顔で返事をした。
「ねえシロさん? で、結局セリちゃんは今どこにいるの?」
シロさんは顔をしかめたまま、お茶を受け取ろうと手の伸ばしている。
「……カイン、茶ーよこせ」
「セリちゃんがどこにいるのか教えてくれたら渡してあげる」
「茶ー!」
シロさんが怖い声を出すけど、僕は気にしない。
僕の最優先事項はセリちゃんだ。
結局昨日の夜だって、この一番大事なことを確認させてもらえなかった。もう僕だって我慢の限界だ。
寝ぼけたシロさんなら、口を割るかもしれない。
名付けて『寝ぼけたシロさんにしゃべらせてしまえ作戦』!!
朝起きた僕が、寝ているシロさんを見ながらひらめいた作戦だった。
「お茶よりもセリちゃんのことが先だよ。言わないと冷めちゃうよ。冷めたお茶は嫌いなんでしょ? ほら、早く言いなよ」
「……ちっ」
シロさんが舌打ちをして、そっぽを向く。
ふーん、そう。そういう態度なんだね。
「じゃあこのお茶はオレが飲むね。シロさん、もう少し寝てれば? おやすみー」
「……いい度胸じゃねえかカイン。俺の茶を飲もうなんて」
「シロさんのお茶じゃないよ。オレが淹れたお茶だよ。あーおいしー。あったまるー」
「あー! てめぇ……っ! マジで飲みやがったな、こんにゃろー! お仕置きしてやる!」
寝起きで動きが悪いはずのシロさんが、すごい速さでつかみかかってきた。
ヤバい! ちょっとやりすぎた!
僕は全力で逃げることにする。
つかまれたらおしまいだ!
「うわ! シロさんが質問に答えないからだろ! お茶の一杯で怒りすぎ!
あ! ちょっと! そこの鍋ひっくり返さないでよ! 朝ごはん入ってるんだからね! ダメにしたらオレが怒るよ!」
――結局。
怒り狂ったシロさんを鎮めるため、僕はもう一回お茶を淹れ直すことになった。
寝ぼけたシロさんにしゃべらせてしまえ作戦……失敗。




