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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第13章 截然の紫 ~revelation~
131/395

piece.13-3



 ナナクサがシロさんの声で笑った。


「だましてねえよ。嘘は言ってねえだろ?」


 僕はシロさんにつかみかかった。


「――っよく言うよ! 噓ばっかりじゃないか! ナナクサと仲が悪いとか……っ、別行動中だとか……っ、噓ばっかり……セリちゃんのこと刺したり、濡れ衣着せたり、全部……っ、全部シロさんが仕組んだ罠じゃないか……っ! 最低だ!

 オレはシロさんのおもちゃじゃない! 最低だ! 何がしたいんだよ! 嘘つき! ふざけんな!」


「落ち着け。泣くな。化粧が流れる」


 シロさんがデコピンしてきた。

 いつもと変わらないみたいに。僕を適当にあしらうときみたいに。


 ひどい……。

 僕がどんなにショックを受けてるかなんて……、どんなに傷ついたかなんて……シロさんはとっては、たいしたことじゃないんだ……。


 くそ。泣きたくなんかないのに。

 悔しすぎて涙が出てきた……。

 ああもう……腹立つ。悔しい。めちゃくちゃ腹立つ……!


 僕は思わず目をこすった。


「あ! こら! 化粧し直しじゃねえかよ! ……ったくよお。

 お前は『言葉の(あや)』って(いき)も理解できねえのかよ。

 俺の言葉を聞いて、自分に都合の良い解釈してたのはお前の方だろう?

 嘘って言うのは、Q:『シロさんはナナクサなんですか?』A:『いいえ、違います』……こういうのだろ?

 お前、一度でも俺にそこまで切り込んできたことあったかよ? ねえだろうが」


 なんで僕が悪いみたいな言い方をされてるんだろう。絶対にシロさんの方が悪いはずなのに……。


「普通そんなの、考えるわけないよ……。だって……ナナクサは女で、シロさんは男なんだし。

 声だって全然違うし……雰囲気だって……」


「んなこた知るかよ。こっちにも都合があるんだよ。

 あの即席キャラバンのメンバーだって、ナナクサ団長様の中身が、男の俺だなんて誰も知らねえんだから。

 お前みたいな部外者なんかにバラせるわけねえだろ」


「……え? 即席……? 誰もシロさんがナナクサだって、知らないの?」


 シロさんがうんざりした顔をした。ナナクサの顔だけど、表情はシロさんだった。


「すっっげえめんどくせえんだぜ? 一つのグループ内に男女混合ってのは。

 すーぐ誰が誰と寝ただの、『アタシの男を盗った』だの『これは俺の女』だの。超めんどくさくてやってらんねえの。

 女だけなら女だけ。女同士でまとめた方が面倒が少なくて楽なんだよ」


「……その経緯、詳しく教えてよ。ちゃんと、オレが勘違いしないような言い方でさ。

 あと、セリちゃんはどこにいるの? セリちゃんの居場所、本当に知ってるの? オレに教えてくれる気あるの? 会わせてくれる気あるの?」


 僕はシロさんの目をまっすぐに見ながら質問した。


 だまされないように。

 かわされないように。

 本当のことを教えてもらうために。


 シロさんは、面白そうに目を細めて笑った。

 完全にナナクサの表情だ。

 思わずドキッとしてしまう。


「貴族様の豪邸で、ゆっくり休養がとれたらな」


 ……やっぱりかわされてしまった。

 シロさんに口を割らせるのって、すごく大変だ。


「やだ。いま話してよ」


「やだ。ボクはうまいもんをたらふく食ってベッドで寝たいんだもん」


 シロさんがへなちょこな喋り方で言い返してくる。……腹立つ。

 ナナクサの見た目でやられると、余計に腹立つ……。


 でもシロさんはこうなると絶対に口を割らない。

 僕にできる作戦としては、油断させるか、気が変わるのを待つしかない。


 僕は崩れてしまった化粧を直すと、シロさんを睨んだ。


「……約束だからね」


 シロさんはふっと微笑んだ。ナナクサの顔で。


「だーから、俺は約束なんて守ったことねーんだって。いい加減学習しろよ」


 ……絶対に守らせてやる。


 こうして、僕とシロさんの『自称絶世の美女コンビ』は、貴族の別荘である豪邸の門へと乗り込んだのだった。

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