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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第12章 哀傷の紫 ~affliction~
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piece.12-4



 僕たちはまた別の町についた。


「……へなちょこ。気づいたか……?」


 シロさんが緊張感のある顔で僕にささやいた。

 思わず僕の緊張も高まる。


 ……どうしたんだろう。町は見た感じ平和そうに見えるけど……。


「この町、やべぇぞ……」


 シロさんは声を(ひそ)める。


 なんだろう。もしかして、僕の住んでた街みたいに、『毒』が広がってて、町の人がみんな悪い人になってたりするのかな……。


 なら――、そんな町に泊まるのは嫌だから、今から引き返すか、すぐにこの町を出発して――……。


「女のレベルがクソ高い」


「……は?」


「は? じゃねえよ。見ろ、あの女。その隣の女も。あれプロじゃねえぞ、一般人だ。

 一般町人のレベルじゃねえぞあれは。すげえ……なんて町だ……」


 なんて返せばいいんだろう。


 僕は言葉に迷った。そして迷ってるうちにシロさんはさっさと行ってしまう。

 さっき指差してた女の人たちのところに――。


 シロさんはあっという間に、その女の人たちと仲良くなってしまい、宿まで紹介してもらった。


 二人組の女の人は姉妹で、家族で宿を切り盛りしていた。

 当然シロさんはその宿に泊まることに決めてしまう。もちろん僕もだ。


 ……うん、別にいいよ。


 僕がなんて言おうが、シロさんがそうするって決めたことには、僕は絶対に従わされるって、もう分かってるから。


 僕は観念(かんねん)した。




 宿はこじんまりした、小さめの建物だった。

 でも、なんていうか安心する感じだった。


 僕たちに用意された部屋はあったかくて、きれいで、なんだか落ち着くところだった。


「さて、女は二人。俺たちも二人。

 どうするへなちょこ。お前に先に選ばせてやってもいいぜ? どっちがいい?」


 ベッドに腰をおろしたシロさんが、謎の質問をしてきた。


「……なんの話?」


「夜の話」


 シロさんがにやりと笑う。


 ……ああ、またか……。


 僕はうんざりしてしまう。僕はまた今夜もうるさくて眠れないのか……。


 せめて嫌味の一つでも言わないと気が済まなかった。


「シロさん。あのね、ああいうことはね、誰とでもするようなことじゃないんだよ。

 触られるのが嫌じゃないって思えるような――、触られてもいいって思えるような――そういう人とするものなんだよ。

 でないと心も体もボロボロになって、いつか壊れちゃうんだよ」


 言ってから、僕はあれ? って思った。


「へなちょこ。それ、誰の受け売りだ?」


「……セリちゃん」


 僕が答えた瞬間、シロさんが激しく吹き出した。僕の顔にツバが飛ぶ。


「ちょっと! シロさん! 汚い!」


「……し、死ぬ……っ! あいつにそんな説教された日にゃ……っ、ぶは! なにが……ははっ! くっ、ぶふふ……! へなちょこ……! ウケる……!」


 シロさんはベッドで笑い転げてもだえ苦しんでいる。


 ……もう、真面目な話をしたのに……。


 僕は納得いかない気持ちでシロさんを見つめた。


 僕の気のせいだったのかな……。


 シロさんが、一瞬……泣きそうな顔をしたように見えたのは――。

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