piece.11-2
「っぶ……っはあ!」
「……ようやく起きやがったな。寝言がうるせえんだよ」
僕の口を塞いでいたシロさんが、すっごく怖い顔をして睨んでいた。
小屋の中は真っ暗だった。たぶん、まだ夜中だと思う。
窓から差し込む弱々しい月の明るさだけでも、シロさんが怒っていることは充分伝わってきた。
だけど、僕にだって言いたいことがあった。
「シロさんっ! 今! なにで僕の口を塞いだのっ! 正直に言って! まさか口でじゃないよね!?」
あの夢のセリちゃんの感触が、実はシロさんだったなんて、そんなこと……あっていいわけがない!
あってはいけないことだ!
断じてダメだ!
「はあ? ……まだ寝ぼけてんのか、へなちょこ。
んな気色の悪い起こし方するやつがあるか。
女ならまだしも、男相手にするわけねえだろ。バカか?」
したじゃないか!! しかも舌まで入れたくせに!!
……とはさすがに言いたくもないので黙っておく。
「寝てる人の息を止めるなんて最低だ!
いくらシロさんでも、やっていいことと悪いことがあると思う!」
「お前が寝言で『セリちゃんセリちゃん』うるっっせえからだよ!
なーにが『しゅきしゅきだいしゅっき♡』だ! 気色悪すぎて寝てられねえんだよこっちは!」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
恥ずかしさ大爆発だ。
あの恥ずかしい夢の中が、まさかシロさんに筒抜けだなんて恥ずかしすぎる!! 最悪だ!
「だーから……うるっせえって、言ってるだろ……?
……お前なあ……いい加減にしねえと……泣かすぞ? ん?」
シロさんが僕の首をきゅっと握りながら笑った。
でも目が笑ってない。なんかギラギラしてる。すっごく怖い。そうとう機嫌が悪いと思われる。
僕は無言で何度も首を縦に振った。
殺られる。……そう思ってしまった。
シロさんは僕をベッドへ突き飛ばすと、大きな舌打ちとため息をして、自分のベッドへ戻っていった。
僕は痛感した。
……シロさんとこういう狭い小屋の中で一緒に寝るのは危険だ。
ちょっとでも起こしてしまうと、命が危ない……。
早くセリちゃんと合流して、一刻も早くシロさんのいない生活に戻りたい。
早くセリちゃんに会えますように……。
僕はそんなことを思いながら、もう一度眠りについた。
つかまれた喉が、地味に痛かった……。




